判旨
自作農創設特別措置法に基づく農地の売渡しは、原則として買収時期の耕作者を対象とすべきであり、客観的評価において当該耕作者を不適当と認める特段の事情がない限り、他の者を相手方とする売渡計画は違法となる。
問題の所在(論点)
行政庁(農地委員会)による売渡相手方の選定において、法令上の原則(買収時の耕作者への売渡し)に反して他の者を選定することが許される要件、およびその判断の司法審査の性質が問題となる。
規範
自作農創設特別措置法施行令17条1項1号の解釈として、政府が買収した農地は、買収時期において当該農地につき耕作の業務を営む小作農に対し売渡すのが原則である。買収時期と昭和20年11月23日現在の耕作者が異なる場合であっても、市町村農地委員会が、買収時期の耕作者を売渡相手方とすることが「適当でない」と認めるとき(裁判所の判断にまつべき客観的評価において判断されるべきもの)に限り、昭和20年11月23日時点の耕作者を相手方と定めることができる。
重要事実
政府が自作農創設特別措置法により買収した農地について、売渡しの相手方の選定が問題となった。本件では、被上告人が買収時における実質的な耕作者であると認定されたが、村農地委員会はこれと異なる認定に基づき、被上告人以外の者を相手方とする売渡計画を策定した。このため、買収時の耕作者である被上告人を排除してなされた売渡計画の適法性が争われた。
あてはめ
被上告人は判示の事情によれば買収時における耕作の業務を営む小作農であると認められる。この場合、客観的評価において被上告人を売渡しの相手方とすることが「不適当」であると認められるべき事情は存在しなかった。それにもかかわらず、農地委員会がこれに反する認定を行い、被上告人以外の者を相手方として売渡計画を策定したことは、客観的事実に基づかない不法な認定であるといえる。
結論
本件売渡計画のうち、被上告人を相手方とせず他の者を相手方と定めた部分は違法である。
事件番号: 昭和28(オ)307 / 裁判年月日: 昭和32年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の買収計画において、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を対象とした場合であっても、不服申立や出訴期間内の提起がない限り、その一事をもって当然に無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地を買収した際、登記簿上の所有名義人を真実の所有者と誤認して買収計画を策…
実務上の射程
行政庁の裁量権行使の端緒となる事実認定について、客観的評価による司法審査を及ぼした事例。裁量権の逸脱・濫用(事実誤認)を理由に取消しを求める際の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)1064 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく買収農地の売渡相手の選定は、農業委員会の自由な裁量に委ねられており、その行使が著しく不合理でない限り適法である。 第1 事案の概要:上告人は、本件農地を含む土地を50万円で買い受けた実態があったが、農業委員会は本件農地の売渡計画において、上告人以外の第三者を売渡の相手方…
事件番号: 昭和28(オ)241 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: その他
自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号に該当する農地は、他の農地を遡及買収する場合でも在村地主の小作地保有面積の計算上小作地に算入することはできない。
事件番号: 昭和28(オ)1358 / 裁判年月日: 昭和30年7月15日 / 結論: 棄却
農地所有者間で交換的に相手方所有農地を耕作している場合、右農地は小作地である。
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…