自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号に該当する農地は、他の農地を遡及買収する場合でも在村地主の小作地保有面積の計算上小作地に算入することはできない。
自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号に該当する農地を在村地主の小作地保有面積の計算上小作地に算入することの可否
自作農創設特別措置法6条の2第1項2項本文1号,自作農創設特別措置法3条1項本文2号
判旨
農地買収計画における保有小作地面積の算定は、基準日現在ではなく買収計画樹立当時の実態によるべきであり、適法に自作地となった土地を小作地に算入して買収計画を立てることは違法である。また、買収計画の具体的な内容決定は行政庁の裁量に属し、裁判所がこれに代わって判断することはできない。
問題の所在(論点)
1. 買収計画における保有小作地面積の算定基準時はいつか(基準日か買収計画時か)。 2. どの農地を保有させ、どの農地を買収するかという判断は裁判所の審理対象となるか(裁量権の逸脱濫用以外の当不当を判断できるか)。
規範
自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画において、保有小作地の面積を算定する基準時点は「買収計画樹立当時」とする。基準日に小作地であっても、その後買収計画樹立時までに賃貸借契約が適法かつ正当に解約され、自作地となった農地については、保有面積算定上の小作地に算入することは許されない。また、買収計画のうち「どの農地を保有させ、どの農地を買収するか」という具体的選定は、農業委員会の専門的な判断(行政裁量)に委ねられるべき事項であり、裁判所の審判権の範囲外である。
重要事実
上告人の所有する複数の畑地について、被上告人である農地委員会が自作農創設特別措置法に基づき買収計画を樹立し、訴願棄却の裁決を行った。上告人は、一部の土地が買収計画時までに適法に返還され自作地となっていたにもかかわらず、基準日(昭和20年11月23日)現在の事実に基づき、当該土地を小作地として算入して保有面積を計算し、他の土地を対象に買収計画を立てたことは違法であると主張して、計画等の取消しを求めた。
事件番号: 昭和30(オ)718 / 裁判年月日: 昭和33年3月7日 / 結論: 棄却
一 農地所有者の地位、職業、子の教育関係等を考慮すれば右所有者が村内に住所を有するに至るであろう時期が七年余の将来より更におくれるかも知れない状況にある場合は、その地主は自作農創設特別措置法第四条第三項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当しない。 二 農地賃貸借について農地…
あてはめ
1. 自創法は一定の事由がある場合に遡及買収をしない旨を規定しており(同法6条の2第2項等)、適法に自作地化した土地を小作地として扱うことは法の趣旨に反する。本件では、計画時に既に自作地となっていた農地を小作地として計算し、それに基づき買収計画を樹立した原判決の認定は法令の解釈を誤っている。 2. どの土地を小作人の保有分とし、どの土地を買収対象とするかという計画の具体的構成は、地域農業の実情に精通した農業委員会が決定すべき事柄である。したがって、裁判所が独自の判断で買収計画の一部を維持したり修正したりすることは、行政の裁量権を侵すものであり許されない。
結論
本件買収計画は算定基準の誤りにより全部が取消を免れない。原判決を破棄し、上告人の請求を認容して本件買収計画及び訴願棄却裁決を取り消す。
実務上の射程
行政処分の基準時と裁量権の限界に関する重要判例である。特に、処分の内容決定に行政庁の専門的判断を要する場合、裁判所が裁量に介入して「一部取消」等を行うことの制約(裁量の尊重)を示す場面で引用される。
事件番号: 昭和28(オ)308 / 裁判年月日: 昭和32年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の売渡しは、原則として買収時期の耕作者を対象とすべきであり、客観的評価において当該耕作者を不適当と認める特段の事情がない限り、他の者を相手方とする売渡計画は違法となる。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法により買収した農地について、売渡しの相手方の選定が問…
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…
事件番号: 昭和25(オ)221 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: その他
昭和二二年法律第二四一号による自作農創設特別措置法改正後の同法第六条の二第二項各号に該当する場合は、右改正前の同法附則第二項による農地買収計画も違法である。