一 農地所有者の地位、職業、子の教育関係等を考慮すれば右所有者が村内に住所を有するに至るであろう時期が七年余の将来より更におくれるかも知れない状況にある場合は、その地主は自作農創設特別措置法第四条第三項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当しない。 二 農地賃貸借について農地調整法第四条第一項による承認も許可もない場合でも、自作農創設特別措置法によりその農地を小作地として買収することは違法ではない。
一 自作農創設特別措置法第四条第三項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当しない一事例 二 農地調整法第四条第一項による承認、許可なく賃貸した農地を自作農創設特別措置法により小作地として買収することの適否
自作農創設特別措置法4条3項,自作農創設特別措置法2条2項,農地調整法4条1項
判旨
農地調整法上の承認や許可を欠くため法的に無効な小作契約であっても、地主が自ら耕作せず他人の意思で耕作させている実態がある以上、自作農創設特別措置法に基づく買収においては小作地として扱われる。
問題の所在(論点)
農地調整法上の承認・許可を欠くため私法上無効な小作契約に基づき他人が耕作している農地について、自作農創設特別措置法上の「小作地」として買収対象にすることができるか。
規範
自作農創設特別措置法による農地買収の対象判断において、当該農地が「小作地」に該当するか否かは、法的な賃貸借契約の有効性のみならず、耕作の実態に基づいて判断される。すなわち、たとえ小作契約が法的に無効であっても、地主が自ら耕作せず、その意思によって他人に耕作させている実態があるならば、当該農地は同法上の買収対象となる小作地と解するのが相当である。
重要事実
上告人(地主)は、本件農地を訴外Dに対し使用貸借または賃貸借し、Dが耕作を行っていた。しかし、この契約は農地調整法4条所定の承認または許可を得ていないものであった。その後、本件農地について自作農創設特別措置法に基づく買収計画が定められた際、上告人は当該農地が小作地に該当しないこと、および自身が「住所を有するに至る見込みのあるもの」に該当することを主張して争った。
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…
あてはめ
本件において、農地は訴外Dによって耕作されていた。上告人とDとの間の契約は農地調整法上の許可等を欠き無効であるが、上告人が自ら耕作せず、その意思に基づいてDに耕作させていた事実に変わりはない。このような実態がある以上、同法の目的である自作農創設の観点からは、法的な無効を問わず小作地として扱うべきである。また、上告人の居住見込みについては、地位や職業、子の教育関係等の具体的事情から、7年以上の将来まで遅れる可能性があると認定されており、要件を充たさない。
結論
本件農地は小作地として買収対象になり、また上告人は居住見込みのある者にも該当しないため、買収計画は適法である。
実務上の射程
行政法上の規制(承認・許可)に違反する私法上の契約であっても、行政目的(農地改革)の達成分野においては、その実態に着目して法的評価がなされることを示した。公法上の権利義務関係が私法上の有効・無効に直接左右されない場合があることを示す一例として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1358 / 裁判年月日: 昭和30年7月15日 / 結論: 棄却
農地所有者間で交換的に相手方所有農地を耕作している場合、右農地は小作地である。
事件番号: 昭和28(オ)241 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: その他
自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号に該当する農地は、他の農地を遡及買収する場合でも在村地主の小作地保有面積の計算上小作地に算入することはできない。
事件番号: 昭和25(オ)419 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の解約について合意がなされた場合であっても、その解約が適法かつ正当であるか否かは、自作農創設特別措置法の趣旨に照らし、小作人と地主の生活状態等を比較衡量して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人とD等との間で農地の解約について合意がなされた事案において、原審はその解約が合意によるものであ…
事件番号: 昭和24(オ)155 / 裁判年月日: 昭和28年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「小作地」とは、正権原に基づく耕作者の地位を安定させる趣旨から、無権利者が耕作する土地はこれに含まれない。賃貸借が合意解除され消滅した後に、当初から賃貸人の承諾なく耕作していた転借人が占有する土地は、同法の小作地に該当しない。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)…