昭和二〇年法律第六四号による改正前の農地調整法第九条第一項及び第三項は、合意によつて賃貸借契約を解約する場合には適用がない。
昭和二〇年法律第六四号による改正前の農地調整法第九条第一項及び第三項と農地賃貸借契約の合意解約
農地調整法(昭和二〇年法律六四號による改正前のもの)9條第1項3項
判旨
農地調整法9条1項及び3項の制限は、賃貸人が一方的に賃貸借を解約する場合の規定であり、合意解約には適用されない。そのため、合意解約による賃貸借終了の場合、解約の正当事由や農地委員会への通知は買収計画の適法性判断に影響しない。
問題の所在(論点)
農地の賃貸借が「合意解約」された場合、旧農地調整法9条1項・3項に定める解約制限(正当事由の必要性や行政庁への通知義務等)が適用されるか。また、同条の不遵守が買収計画の違法性に影響するか。
規範
旧農地調整法9条1項及び3項は、農地の賃貸人が賃借人の承諾なくして一方的に賃貸借の解約をなす場合を対象とする規定である。したがって、賃貸借が当事者双方の合意によって解約される場合には、同条の適用はないと解するのが相当である。
重要事実
本件(一)ないし(三)の土地について、自作農創設特別措置法3条1項1号に基づき、小作地であることを前提とした買収計画が立てられた。しかし、当該土地の賃貸借関係は、買収の基準日(昭和20年11月23日)時点で、賃貸人と賃借人の合意により既に解約され終了していた。上告人は、当該解約につき農地調整法9条所定の「正当なる事由」の有無や農地委員会への通知が不明であることを理由に、解約の効力および買収計画の適法性を争った。
事件番号: 昭和25(オ)25 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の合意解約が一応適法に成立した場合であっても、その内容が正当なものとは認められない限り、当該合意解約を理由に農地の買収計画を排除することはできない。農地の集中を生じない場合であっても、適法な合意解約の存在のみによって遡及的な買収計画の策定が制限されるものではない。 第1 事案の概要:上告人と小…
あてはめ
本件土地の賃貸借は双方の合意により解約されている。農地調整法9条は一方的な解約を制限する趣旨であり、合意解約には適用されない。したがって、本件では解約に「正当なる事由」があったか否かを判決上明らかにする必要はなく、農地委員会へ事前に通知したか否かを釈明する必要もない。基準日において本件土地が小作地でないことは明白であり、小作地として買収計画を立てた処分は違法である。
結論
合意解約には農地調整法の解約制限規定は適用されない。本件土地は買収基準日において小作地ではないため、これに対する買収計画は違法として取り消されるべきである。
実務上の射程
行政法上の処分(買収計画)の前提となる私法上の法律関係(賃貸借の存否)の認定において、農地法の前身である農地調整法の制限の射程を画定した。合意解約については強行法規による修正を受けないことを示しており、現在の農地法18条等の解釈においても、合意解約と解約申入れを区別する議論の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和25(オ)419 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の解約について合意がなされた場合であっても、その解約が適法かつ正当であるか否かは、自作農創設特別措置法の趣旨に照らし、小作人と地主の生活状態等を比較衡量して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人とD等との間で農地の解約について合意がなされた事案において、原審はその解約が合意によるものであ…
事件番号: 昭和24(オ)155 / 裁判年月日: 昭和28年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「小作地」とは、正権原に基づく耕作者の地位を安定させる趣旨から、無権利者が耕作する土地はこれに含まれない。賃貸借が合意解除され消滅した後に、当初から賃貸人の承諾なく耕作していた転借人が占有する土地は、同法の小作地に該当しない。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)…
事件番号: 昭和26(オ)3 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第三条第一項第一号によつて準地区として指定すべき区域について指定を行わず、その区域内の農地を不在地主の小作地として買収することは違法である。