判旨
農地が自作農創設特別措置法5条5号の買収除外事由に該当するか否かは、周囲の状況に加え、所有者の非農地化の意図も客観的事実として現れている以上、判断の資料とすべきである。必ずしも附近一帯の宅地化の推移方向等まで具体的に認定することを要さず、土地の現況や沿革的事実から総合的に判断される。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法5条5号の農地該当性を判断するにあたり、周辺地域の宅地化の推移方向を具体的に認定する必要があるか。また、所有者の主観的な意図を判断資料に含めることができるか。
規範
自作農創設特別措置法5条5号にいう「近く土地使用の目的を変更することを相当とするもの」に該当するか否かは、必ずしも附近一帯の宅地化の推移方向等まで具体的に認定することを要しない。土地の周囲の状況を客観的に評価することに加え、所有者の非農地化の意図が客観的事実として現れている場合には、これも判断の資料として考慮すべきである。
重要事実
本件土地の所有者(被上告人)は、当該農地について工場建築の許可を得るなど、非農地化に向けた具体的な手続きを進めていた。土地の現況および周囲の状況から、農地としての利用継続よりも他目的への転用が相当視される状態にあり、行政当局による買収の適否が争われた。
あてはめ
本件土地は、周囲の状況からみて土地使用目的の変更が相当と認められる状態にある。また、被上告人が工場建築の許可を得ている事実は、単なる主観的意図に留まらず客観的な沿革的事実として現れている。したがって、附近一帯の宅地化の推移方向を詳細に認定せずとも、これらの事実に基づき同号該当性を肯定することが可能である。
結論
本件土地は同法5条5号に該当し、買収の対象から除外されるべきものと判断した原審の結論は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和34(オ)1181 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、買収対象地の選択は行政庁の裁量に属し、地主に選択権はない。また、宅地化の予見可能性がない農地は同法5条5号の除外事由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人の所有する本件農地に対し、国が自作農創設特別措置法に基づき買収処分を行った。これに対し上告人は…
農地の買収除外事由の判断において、土地の物理的現況(周囲の状況)だけでなく、権利者の転用意図が行政手続等の客観的事実として具体化している場合には、有力な判断要素となることを示した。行政処分の適法性評価における考慮要素の範囲を画定する際の参考となる。
事件番号: 昭和30(オ)756 / 裁判年月日: 昭和31年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未墾地買収処分において、買収区域が買収令書によって特定されていない場合は違法であるが、令書の作成過程や標識設置時期に変更等があっても、直ちに区域が不特定であるとは断定できない。 第1 事案の概要:上告人は、国による本件未墾地買収処分について、その買収区域が不特定であるから違法であり、取り消されるべ…
事件番号: 昭和36(オ)736 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条五号の事由ありと主張した事案において、同条四号の事由に該当するとの主張があるとしての判断をしなかつたとしても違法はない。
事件番号: 昭和30(オ)542 / 裁判年月日: 昭和31年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、特定の除外事由を主張することは、当該土地が買収計画樹立当時に農地であることを前提とする。また、原審において主張・判断されていない事項を上告審で新たに主張することは適法な上告理由とならない。 第1 事案の概要:上告人は、本件係争土地が自作農創設特別措置…
事件番号: 昭和31(オ)414 / 裁判年月日: 昭和35年4月8日 / 結論: 棄却
旧森林法による施業案を編成し主務庁の認可を受け戦時中のため実施に至らなかつたが、右施業案の実施上枢要な地位を占める土地であつて、これを失うことが施業案全体に重大な影響があり、施業案の目的完遂を困難らしめるような土地は(本判決および原判決参照)、採草の用に供されていても、これを自作農創設特別措置法にいう牧野に該当しないも…