判旨
自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、特定の除外事由を主張することは、当該土地が買収計画樹立当時に農地であることを前提とする。また、原審において主張・判断されていない事項を上告審で新たに主張することは適法な上告理由とならない。
問題の所在(論点)
原審において特定の法的性質(買収除外事由)を主張していた当事者が、上告審においてその前提事実(農地性)を否定し、あるいは原審で主張・判断されていない新たな事項を理由として上告することができるか。
規範
上告審は事後審であり、原則として原審で主張され、かつ判断の対象となった事項に限り審査の対象とする。また、特定の性質(自作農創設特別措置法5条5号等)に基づく買収除外の主張は、その前提として当該土地が買収時に「農地」であることを認める性質を包含し、矛盾する前提事実を上告審で新たに持ち出すことは許されない。
重要事実
上告人は、本件係争土地が自作農創設特別措置法5条5号(買収除外事由)に該当すると準備書面で主張していた。しかし、原審は証拠に基づき、本件買収計画樹立当時において当該土地の現況が「農地」であったことを適法に認定した。上告人は、上告審において原審の認定と異なる事実を前提とした法令違反や違憲を主張して上告を申し立てた。
あてはめ
上告人が原審の準備書面で述べた「5条5号に該当する」との主張は、当該土地が買収当時「農地」であったことを前提としてはじめて成立するものである。したがって、これに付随する記載は主張を理由付けるための事情説明に過ぎず、前提事実を否定する趣旨を含まない。また、原審で主張・判断されていない事項を上告審で新たに主張することは、事後審の構造上、適法な上告理由とは認められない。
結論
本件上告は棄却される。原審で主張・判断のない事項を新たに主張することは適法な上告理由に当たらない。
事件番号: 昭和35(オ)526 / 裁判年月日: 昭和36年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消訴訟において、処分庁は処分の適法性を基礎付ける法律要件について主張立証責任を負うが、相手方が争わない事項についてまで主張立証を尽くす必要はない。また、一審・原審において主張しなかった新たな事実関係に基づく違法事由を、上告審で主張することは許されない。 第1 事案の概要:上告人(所有者…
実務上の射程
訴訟上の主張の整合性と、上告審における更新権の制限(事後審構造)を確認するものである。実務上は、下級審での主張と矛盾する主張や、新たな事実・法的論点を上告審で持ち出すことの困難さを論じる際の根拠となる。また、農地買収の対価と憲法29条の関係については既決の判例(正当な補償に関する大法廷判決)を引用するに留めている。
事件番号: 昭和27(オ)67 / 裁判年月日: 昭和28年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件農地が自作農創設特別措置法5条6号および同法施行令7条2号に規定する買収除外事由に該当するか否かが争われたが、最高裁は原審の事実認定を維持し、当該農地が同規定の対象に当たらないと判断した。 第1 事案の概要:上告人は、対象となった農地が自作農創設特別措置法5条6号および同法施行令7条2号に該当…
事件番号: 昭和30(オ)379 / 裁判年月日: 昭和32年10月8日 / 結論: 破棄差戻
土地区画整理のため換地を受けた土地が現に耕作されているからといつて、直ちにこれを農地ということはできない。
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…