土地区画整理のため換地を受けた土地が現に耕作されているからといつて、直ちにこれを農地ということはできない。
土地区画整理のため換地を受けた土地を農地と認定することの可否
都市計画法(昭和29年5月法律120号土地区画整理法施行法による改正前)12条,自作農創設特別措置法2条1項
判旨
土地区画整理による換地処分が行われた土地は、現に耕作の目的に供されていても直ちに農地と断定すべきではなく、事業の公権力的性格や宅地化工事の完了状況に照らし、なお農地と認めるべき状態にあるかを慎重に判断すべきである。
問題の所在(論点)
土地区画整理事業により換地処分を受けた土地が、現に耕作されている場合に、自作農創設特別措置法上の「農地」にあたると判断するための基準が問題となる。
規範
自作農創設特別措置法2条1項の「農地」とは、耕作の目的に供される土地を指すが、現に耕作されている土地であっても常に農地と認められるわけではない。土地区画整理事業は公権力の作用として宅地利用の増進を目的になされるものであり、換地処分が行われた以上は一応宅地化工事も完了していると推測される。したがって、現に耕作されている事実のみをもって直ちに農地と認定することはできず、当該土地がなお農地と認めるべき状態にあるかを個別具体的に判断すべきである。
重要事実
本件土地は、昭和24年に土地区画整理組合による事業の一環として換地処分を受けた。当該事業は、都市計画法および耕地整理法に基づき、宅地としての利用増進を目的として強制的な組合員化を伴う公権力的作用により実施されたものである。本件買収計画当時、当該土地には古くからの賃借権が存在し、現に耕作が行われていた。原審は、換地は法律上従前の土地とみなされ賃借権も存続することから、現に耕作されている以上は農地にあたると判断した。
事件番号: 昭和30(オ)542 / 裁判年月日: 昭和31年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、特定の除外事由を主張することは、当該土地が買収計画樹立当時に農地であることを前提とする。また、原審において主張・判断されていない事項を上告審で新たに主張することは適法な上告理由とならない。 第1 事案の概要:上告人は、本件係争土地が自作農創設特別措置…
あてはめ
土地区画整理事業は所有者の意思にかかわらず土地を宅地とすることが適当と認めて施行されるものであり、一旦公権力をもって宅地化を推進しながら、後に再び公権力をもって農地として買収することは矛盾を孕む。また、換地処分は通常、工事完了後に行われるため(耕地整理法31条)、処分がなされた事実は宅地化の完了を強く推認させる。原審が、現に耕作されているという外形的事実のみに基づき、事業の法的性格や換地処分の効果を考慮せずに農地と認定した点は、法の解釈を誤ったものといえる。
結論
本件土地が換地処分後もなお「農地と認めるべき状態」にあったか否かをさらに審理させるため、原判決を破棄し、本件を原裁判所に差し戻す。
実務上の射程
土地の法的性質の判定において、現況(耕作の有無)という事実認定だけでなく、その土地が置かれた公法的な位置付け(区画整理事業の進捗や換地処分の有無)を重視する。行政行為の整合性や公権力の矛盾禁止という観点から、形式的な定義にとらわれない実質的な判断枠組みを提示したものとして、土地収用や行政上の規制に関連する事案に応用可能である。
事件番号: 昭和27(オ)129 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、国家の公権力的行使としての性質を有するため、民法177条の適用はなく、登記の有無にかかわらず実体上の権利関係に基づいて判断される。 第1 事案の概要:本件農地につき、昭和20年11月23日当時、訴外Dが共有持分権者として登記されていた。しかし、実体上の権…
事件番号: 昭和31(オ)45 / 裁判年月日: 昭和32年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無権原で開墾・耕作が行われている土地に対する買収処分について、処分の取消しにより耕作者が耕作権を失うとしても、不法占拠者による利益の喪失は直ちに公共の福祉に反するものとはいえず、事情判決(現・行政事件訴訟法31条)を適用すべき事由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は本件土地を無権原で開墾し…
事件番号: 昭和30(オ)138 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法律上の手続規定に違反してなされた場合であっても、その瑕疵が当然に処分を無効とするものではなく、出訴期間内に取り消されない限り、公定力により有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収令書が真の所有者である上告人ではなく、…