判旨
自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、国家の公権力的行使としての性質を有するため、民法177条の適用はなく、登記の有無にかかわらず実体上の権利関係に基づいて判断される。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分において、民法177条(対抗要件)の適用があるか。すなわち、実体上の権利を有しない登記名義人に対する買収処分が適法といえるか。
規範
自作農創設特別措置法による農地買収処分については、民法177条の適用はない。したがって、買収処分の有効性は、登記上の表示にかかわらず、実体上の権利関係の存否によって決せられる。
重要事実
本件農地につき、昭和20年11月23日当時、訴外Dが共有持分権者として登記されていた。しかし、実体上の権利関係としては、Dは当該共有持分権を有していなかった。それにもかかわらず、行政庁はDを共有持分権者であるとみなして本件買収処分を行った。
あてはめ
農地買収処分は、私法上の売買とは異なり、国家が公権力に基づいて強制的に農地を取得する行為である。本件において、Dは登記名義人ではあったが、実体上の持分権を有していなかったことが確定している。民法177条の適用が排除される以上、行政庁は実体上の真実の権利者に対して処分を行うべきであり、権利を有しないDを対象とした処分は、実体上の権利関係に合致せず違法であると解される。
結論
本件買収処分に民法177条の適用はなく、実体上の権利を有しない登記名義人に対してなされた買収処分は違法である。
実務上の射程
行政処分が公権力の行使として一方的になされる場合、私法上の取引安全を目的とする民法177条の適用は否定されるという法理(公法と私法の峻別)を示す。公権力による取得一般に応用可能だが、現在は土地収用法等の個別規定の検討が優先される。
事件番号: 昭和28(オ)657 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 破棄差戻
登記簿上の所有者を所有者としてした農地買収処分は、真の所有者がこれを知りまたは知り得べき状態にあつたにかからず、不服申立の方法を採らなかつた場合は、当然には無効ではない。
事件番号: 昭和26(オ)509 / 裁判年月日: 昭和28年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収は、国が公権力を行使して強制的に取得する公法上の行為であり、民法177条の規定は適用されない。したがって、登記の欠缺を理由に農地の買収計画を対抗することができないといった主張は認められない。 第1 事案の概要:訴外Dから被上告人に対し、本件農地が贈与により所有…
事件番号: 昭和27(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、異議申立や出訴期間内に行われた争訟によって是正されない限り、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った際、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を相手方として買収計画お…
事件番号: 昭和30(オ)138 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法律上の手続規定に違反してなされた場合であっても、その瑕疵が当然に処分を無効とするものではなく、出訴期間内に取り消されない限り、公定力により有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収令書が真の所有者である上告人ではなく、…