農地所有者の意思に反して第三者が不法に耕作している場合は、農地法第一五条により買収すべき場合に該らない。
農地所有者の意思に反する第三者の耕作と農地法第一五条による買収の適否。
農地法15条
判旨
農地法15条による国の買収対象となる農地は、所有者以外の者が耕作の用に供している場合を指すが、それが所有者の意思に反して不法に耕作されている場合にまで及ぶものではない。
問題の所在(論点)
農地法15条所定の、所有者等以外の者が「耕作の事業に供した」農地に該当するか否かの判断において、第三者による耕作が所有者の意思に反する不法占拠である場合も含まれるか。
規範
農地法15条に基づき国が買収を行う要件として、所有者及びその世帯員以外の者が耕作の事業に供していることを要する。第三者が耕作している場合、その耕作権原が法律上有効に成立していること(許可の有無等)は必ずしも要しないが、所有者の意思に反して不法に耕作されている場合にまで同条による買収を認める趣旨ではないと解すべきである。
重要事実
上告人は旧自作農創設特別措置法に基づき本件農地の売渡しを受けた。当時、訴外Dが転借人として耕作していたが、売渡しによりDの賃借権は同法22条に基づき消滅した。その後もDは耕作を継続し、上告人との間で返還を巡る経緯があったものの、被上告人(国)はDが耕作していることを理由に、農地法15条に基づき本件農地を強制買収した。なお、売渡し後に上告人とDとの間で新たな賃貸借契約は締結されていなかった。
あてはめ
本件において、Dの賃借権は自創法上の売渡し時に消滅しており、その後の耕作について新たな契約は存在しない。Dによる耕作が上告人の「黙認」のもとで行われていたのか、あるいは「意思に反して」行われていたのかという事情の如何により、同条の適用の可否が分かれる。単に第三者が長期にわたって耕作しているという一事のみをもって、所有者の意思を問わずに買収を適法とすることは、同条の趣旨を誤解したものといえる。
結論
所有者の意思に反する不法な耕作が行われている農地は、農地法15条の買収対象にならない。原審は所有者の意思等の事情を認定せずに買収を適法とした点において、審理不尽の違法がある。
実務上の射程
行政庁による強制買収の要件解釈において、事実上の占有状態だけでなく、所有者の主観的態様や占有の正当性を考慮すべきとした事例。行政法規の解釈において文言上の状態(耕作の事実)だけでなく、私権保護の観点から制限的に解釈する手法として参考になる。
事件番号: 昭和27(オ)67 / 裁判年月日: 昭和28年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件農地が自作農創設特別措置法5条6号および同法施行令7条2号に規定する買収除外事由に該当するか否かが争われたが、最高裁は原審の事実認定を維持し、当該農地が同規定の対象に当たらないと判断した。 第1 事案の概要:上告人は、対象となった農地が自作農創設特別措置法5条6号および同法施行令7条2号に該当…
事件番号: 昭和28(オ)657 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 破棄差戻
登記簿上の所有者を所有者としてした農地買収処分は、真の所有者がこれを知りまたは知り得べき状態にあつたにかからず、不服申立の方法を採らなかつた場合は、当然には無効ではない。
事件番号: 昭和25(オ)419 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の解約について合意がなされた場合であっても、その解約が適法かつ正当であるか否かは、自作農創設特別措置法の趣旨に照らし、小作人と地主の生活状態等を比較衡量して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人とD等との間で農地の解約について合意がなされた事案において、原審はその解約が合意によるものであ…