判旨
自作農創設特別措置法3条5項6号にいう「耕作者がない農地」とは、所有者が耕作の意思を有するにもかかわらず不法占拠者が耕作を妨げているような場合は含まれない。また、仮処分の執行により現に所有者が耕作している農地についても、同号の買収対象には当たらない。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法3条5項6号に規定される、政府が買収できる農地の要件である「適当な耕作者がない農地」の意義、および所有者の耕作を不当に妨げている者が存在する農地がこれに該当するか。
規範
自創法3条5項6号の買収対象となる「耕作者がない農地」には、所有者が耕作の意思を有しているにもかかわらず、正当な権原のない者が不法に占有・耕作して所有者の耕作を妨げている場合は含まれない。法律が不法行為者を保護する結果となる解釈は許されないからである。
重要事実
戦時中に耕作者がいなくなった農地について、第三者が地主との賃貸借契約なく耕作を開始した。所有者が耕作しようとしたが、権限のない占有者らによって妨げられた。その後、所有者は仮処分の執行に基づき現に耕作を開始したが、行政庁側は本件農地が「耕作者がない農地」に該当するとして買収計画を立てた。
あてはめ
本件では、所有者に耕作の意思があるにもかかわらず、補助参加人らが何ら正当な権利なく耕作を継続し、所有者の耕作を妨げていた。このような不法行為的な状況を「耕作者がない」として買収の対象に認めることは、不法行為者を保護することになり不当である。また、買収計画当時、所有者は既に仮処分執行により現に耕作を行っており、実態としても「耕作者がない」状態にはなかったといえる。
結論
本件農地は自創法3条5項6号に該当する農地とはいえず、買収計画は認められない。
実務上の射程
行政処分(農地買収)の要件解釈において、文言上は「耕作者がいない」状態に見えても、それが不法占拠によって作出されたものである場合には、法の趣旨(不法行為者の保護排除)に照らして該当性を否定する判断枠組みとして活用できる。
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事件番号: 昭和26(オ)903 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
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