判旨
自作農創設特別措置法15条1項2号に基づく宅地の附帯買収が認められるためには、当該宅地が売渡農地の経営に必要であることが必要である。この「必要」性の判断においては、全農地の経営における売渡農地の重要度や法の目的に照らし、耕作農家の地位安定に適合するか否かを基準とすべきである。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法15条1項2号にいう、宅地等の附帯買収の要件である「売渡農地の経営に必要な場合」の意義および判断基準が問題となる。
規範
自作農創設特別措置法15条1項2号による宅地等の買収は、当該宅地等が「売渡農地の経営に必要な場合」に限定される。単に農業経営全般(従前の農地と売渡農地の合計)に利用されているだけでは足りず、売渡農地が全農地の経営において占める重要性の度合いその他の事情を総合考慮し、附帯買収により耕作農家の地位を安定させるという法の目的に適合すると認められる場合に限り、必要性が認められる。
重要事実
農地買収の売渡を受けた訴外Dは、売渡農地として畑1畝1歩(約100平米強)を取得したが、従前から経営していた小作地は田畑合計で4反6畝強(約4600平米弱)に及んでいた。Dは本件宅地上の家屋に居住し、狭小な敷地内で農作業を行っていた。本件宅地から売渡農地までは直線で約100間(約181m)離れており、川を隔てて迂回が必要な状況であった。被告(国)側は、この宅地を売渡農地の経営に必要として附帯買収した。
あてはめ
Dが売渡を受けた農地は1畝1歩と極めて僅少であり、従前からの小作地(4反6畝超)と比較して、全農地経営における売渡農地の重要性は殆どいうに足りない程度である。本件宅地が農業経営全般に利用されている実態があるとしても、売渡農地の規模の小ささに照らせば、当該宅地の買収が「売渡農地の経営」を維持し農家の地位を安定させるために不可欠なものとは評価できない。したがって、特段の事情のない限り、売渡農地の経営に必要であるとは認められない。
結論
本件宅地の買収は、売渡農地の経営に必要であるとは認められず、法15条1項2号の要件を欠くため、買収処分は違法である。
事件番号: 昭和24(オ)322 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号により宅地を買収するについては、その宅地が売渡農地の附属地として利用せられて来たものであることを要しないが、売渡農地の経営に必要な宅地であることを要する。
実務上の射程
附帯買収の要件を厳格に解釈し、主たる売渡農地と附帯的な宅地・建物の主従関係を重視する射程を持つ。行政処分における要件解釈において、目的外利用や過剰な介入を抑制する判断枠組みとして、他法令の附帯収用や附帯買収の局面でも援用し得る。
事件番号: 昭和26(オ)922 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく宅地等の附帯買収は、売渡農地と密接不可分の関係にあることを要せず、当該農地の耕作のために必要と認められる限り適法である。また、このような買収は公共の福祉の必要から行われるものであり、憲法29条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人が所有する本件宅地について、行政庁が自…
事件番号: 昭和26(オ)3 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第三条第一項第一号によつて準地区として指定すべき区域について指定を行わず、その区域内の農地を不在地主の小作地として買収することは違法である。
事件番号: 昭和26(オ)559 / 裁判年月日: 昭和28年7月7日 / 結論: 破棄差戻
副業として農業を営むにすぎない者の申請に基き、その者が賃借権を有する宅地建物をいわゆる附帯買収する買収計画は、特別の事情のないかぎり違法である。
事件番号: 昭和25(オ)335 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
農地の売渡を受けた者が賃借している宅地上に家屋を所有して居住していても、その家屋で飲食業と煙草小売業を営み、しかもその宅地が県道に沿い建物は県道に面して建てられ、その位置、構造、間取り等右営業を営むに適するようにできており、表面は県道に接していてすこしの空地もなく裏側には僅かな庭があるだけで農作物の脱穀、乾燥等をするに…