副業として農業を営むにすぎない者の申請に基き、その者が賃借権を有する宅地建物をいわゆる附帯買収する買収計画は、特別の事情のないかぎり違法である。
副業として農業を営む者の申請に基く宅地建物のいわゆる附帯買収計画の適否
自作農創設特別措置法15条1項
判旨
自作農創設特別措置法15条に基づく宅地建物の買収は、原則として農業を本業とする者を対象とすべきであり、副業として農耕に従事する者に過ぎない者の申請については、特段の事情がない限り相当とは認められない。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法15条1項に基づき、市町村農地委員会が宅地建物の買収申請を「相当」と認めるための要件、特に農業を副業とする者が申請した場合の判断基準が問題となる。
規範
自作農創設特別措置法15条が宅地建物の買収を規定する趣旨は、同法1条の目的である耕作者の地位の安定に資する点にある。しかし、当該買収は所有者の犠牲の下に強制的に行われるものであり、一般に賃借人の保護には借地法・借家法等の存在がある。したがって、単に副業として農耕に従事するに過ぎない者のためにまで買収を行うことは、同条の本来の趣旨ではなく、特段の事情がない限り同条1項にいう「相当」な買収とは認められない。
重要事実
訴外Dは、昭和13年以来、精麦および製粉業を営んでいる者である。Dは役畜を用いて農耕に従事しており、農地の売渡しを受けていたが、その農業経営はあくまで副業に過ぎなかった。Dは、自作農創設特別措置法15条に基づき、自身が賃借権を有する本件宅地建物の買収を申請し、市町村農地委員会がこれを相当と認めて買収計画を立てたが、その適法性が争点となった。
事件番号: 昭和25(オ)335 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
農地の売渡を受けた者が賃借している宅地上に家屋を所有して居住していても、その家屋で飲食業と煙草小売業を営み、しかもその宅地が県道に沿い建物は県道に面して建てられ、その位置、構造、間取り等右営業を営むに適するようにできており、表面は県道に接していてすこしの空地もなく裏側には僅かな庭があるだけで農作物の脱穀、乾燥等をするに…
あてはめ
Dは精麦・製粉業を本業としており、農業は副業に過ぎない。このような副業従事者については、借地法・借家法による保護のみでは足りず、所有者の犠牲において強制買収を行うことを正当化するような「特段の事情」が必要である。原審は、Dが農地の売渡しを受けた事実や農業経営に本件宅地建物が必要である事実は認定したが、上記のような「特段の事情」の存否について審理・判示しておらず、副業であるにもかかわらず買収を適法とした点において法律解釈の誤りがある。
結論
農業を副業とする者の申請に基づく買収計画を、特段の事情の存否を検討せずに相当と認めることは違法であり、原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
行政庁(農地委員会)の裁量権の限界を画した判例である。法律の目的(地位の安定)と手段(強制買収)の均衡を考慮し、条文上の「相当」という不確定概念を解釈する際、他法(借地借家法)による代替的な保護の可能性を考慮要素としている点が答案作成上の示唆となる。
事件番号: 昭和26(オ)903 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条1項2号に基づく宅地の附帯買収が認められるためには、当該宅地が売渡農地の経営に必要であることが必要である。この「必要」性の判断においては、全農地の経営における売渡農地の重要度や法の目的に照らし、耕作農家の地位安定に適合するか否かを基準とすべきである。 第1 事案の概要:農…
事件番号: 昭和28(オ)746 / 裁判年月日: 昭和29年12月23日 / 結論: 棄却
建物の賃借権に附随して使用収益を認められた建物敷地は、自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号により買収することができる。
事件番号: 昭和26(オ)922 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく宅地等の附帯買収は、売渡農地と密接不可分の関係にあることを要せず、当該農地の耕作のために必要と認められる限り適法である。また、このような買収は公共の福祉の必要から行われるものであり、憲法29条に違反しない。 第1 事案の概要:上告人が所有する本件宅地について、行政庁が自…
事件番号: 昭和33(オ)1077 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: その他
宅地の附帯買収申請者の主たる所得が農業以外の職業から得られている場合であるかどうかの判断にあたり、継続的にみて常態として主たる所得が農業から得られていると認めらるべき証拠があるにかかわらず、これをは排斥しうべき特段の事情を説示することなく、買収計画樹立前の或特定年度の所得の状況のみに基づき、主たる所得が農業以外の職業か…