農地の売渡を受けた者が賃借している宅地上に家屋を所有して居住していても、その家屋で飲食業と煙草小売業を営み、しかもその宅地が県道に沿い建物は県道に面して建てられ、その位置、構造、間取り等右営業を営むに適するようにできており、表面は県道に接していてすこしの空地もなく裏側には僅かな庭があるだけで農作物の脱穀、乾燥等をするに必要な余地が全くない場合は、右の宅地は、売渡農地の経営には、利用上何らの関係もなく、不適当、不必要な宅地というべく、右宅地を自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号によつて買収することは違法である。
自作農創設特別措置法第一五条第一項による宅地の買収がその宅地が売渡農地の農業経営に不必要、不適当であることによつて違法とされた一事例
自作農創設特別措置法15条1項本文2号
判旨
自作農創設特別措置法15条1項2号に基づき買収の対象となる宅地は、政府から売り渡された農地における農業経営に必要性が認められるものに限定される。農業経営と無関係に飲食業等の営業に利用されている宅地についての買収計画は違法である。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法15条1項2号に基づき政府が買収できる「宅地」の範囲、および農業経営と無関係な営業に供されている宅地が買収対象に含まれるか。
規範
自作農創設特別措置法15条1項2号の規定により買収の対象となる宅地は、政府に買収された農地に従属的な関係にあり、自作農となる者が政府から買い受ける農地における農業経営において必要性が認められるものに限られる。
重要事実
訴外Dは、政府から約8畝の農地の売渡しを受けたが、本件宅地(95坪)は従前、別の者が飲食業・煙草小売業を営んでいた場所であった。Dは建物と営業を譲り受け、当該建物に居住して営業を継続していた。本件宅地は県道に面した2階建の店舗兼住宅で、農作物の脱穀・乾燥等に必要な空地もほとんどなく、農業経営に利用された事実はなかった。
事件番号: 昭和26(オ)559 / 裁判年月日: 昭和28年7月7日 / 結論: 破棄差戻
副業として農業を営むにすぎない者の申請に基き、その者が賃借権を有する宅地建物をいわゆる附帯買収する買収計画は、特別の事情のないかぎり違法である。
あてはめ
本件宅地は、県道沿いの店舗建築物が存在し、その構造や間取りも飲食業等に適したものである。裏庭も僅かで農作業に必要な余地がないことから、Dが政府から買い受けた農地での農業経営には利用上直接の関係がなく、むしろ農業には不適当である。したがって、農業経営上の必要性は認められない。
結論
本件宅地の買収計画は、農業経営上の必要性が認められない土地を対象とするものであり違法である。よって、当該買収計画を取り消した原判決は正当である。
実務上の射程
行政庁の処分権限が法律の目的(自作農の創設・農業経営の安定)に拘束されることを示す事例。条文上の文言(宅地)が広範であっても、法の趣旨から「農業経営への必要性」という内在的制約がかかることを論証する際に有用である。
事件番号: 昭和26(オ)903 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条1項2号に基づく宅地の附帯買収が認められるためには、当該宅地が売渡農地の経営に必要であることが必要である。この「必要」性の判断においては、全農地の経営における売渡農地の重要度や法の目的に照らし、耕作農家の地位安定に適合するか否かを基準とすべきである。 第1 事案の概要:農…
事件番号: 昭和27(オ)131 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条1項2号に基づく建物の買収には、明文の規定がなくとも、当該建物が売渡農地の利用上必要であることを要する。 第1 事案の概要:訴外Dは、本件建物に10年以上居住し農業を続けていた。その後、自作農創設特別措置法に基づき、わずか3畝10余歩の農地の売渡しを受けた。これに附帯して…
事件番号: 昭和35(オ)307 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 棄却
当該未墾地を現状のままにしておくことが周囲の農地の利用にさまたげとならず、これを開墾して近隣の農地の利用のため必要とする特段の事情も認められないこと原審認定のごとき場合には、未墾地買収の必要性がない。
事件番号: 昭和24(オ)322 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第一五条第一項第二号により宅地を買収するについては、その宅地が売渡農地の附属地として利用せられて来たものであることを要しないが、売渡農地の経営に必要な宅地であることを要する。