当該未墾地を現状のままにしておくことが周囲の農地の利用にさまたげとならず、これを開墾して近隣の農地の利用のため必要とする特段の事情も認められないこと原審認定のごとき場合には、未墾地買収の必要性がない。
未墾地買収の必要性がないとされた事例
自作農創設特別措置法30条
判旨
自作農創設特別措置法に基づく未墾地の買収は、自作農の創設や土地の農業上の利用増進の必要がある場合にのみ許される。本件では、土地を現状に置くことが周囲の農地利用を妨げず、開墾の必要性も認められないため、買収は裁量権の限界を逸脱した違法なものとなる。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法30条に基づく未墾地の買収において、農業上の利用増進等の必要性が認められない場合に、当該買収計画を決定することが行政庁の裁量権の逸脱・濫用となるか。
規範
行政庁の処分が裁量権の行使として行われる場合であっても、その処分の根拠法の目的(自作農の創設、農業上の利用増進等)に照らし、処分の必要性が全く認められない場合には、当該処分は裁量権の限界を逸脱したものとして違法となる。
重要事実
上告人(国)は、自作農創設特別措置法30条に基づき、被上告人が所有する未墾地を買収する計画を立てた。しかし、当該土地を現状のまま放置しても周囲の農地利用に支障はなく、また、当該土地を開墾して農地とすることが近隣農地の利用のために必要であるといった特段の事情も存在しなかった。一方で、当該土地は被上告人の生計維持にとって極めて重要な役割を果たしていた。
事件番号: 昭和27(オ)537 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
農地委員会は、未墾地の所有者が自ら開墾する意思を表明したからといつて、必ずしもこれに拘束されるものではなく、自作農創設特別措置法の趣旨目的に基き諸般の事情を考量し、もつとも適当と認めるところに従つて買収計画を定むべきかどうかを決することができる。
あてはめ
同法30条による買収は、自作農の創設や農業上の利用増進の必要がある場合に限定される。本件土地は、現状維持が周囲の農地利用を妨げる事実はなく、開墾を必要とする特段の事情も認められない。したがって、買収の必要性は立証されておらず、法が予定する目的を欠いている。被上告人の生計維持上の必要性を考慮するまでもなく、買収の必要性自体が客観的に欠如している以上、本件買収計画の決定は裁量の合理的な範囲を超えているといえる。
結論
本件買収計画は裁量権の限界を逸脱した違法なものであり、これを取り消した原審の判断は正当である。
実務上の射程
行政庁に広範な裁量が認められる場面(形成裁量等)であっても、処分の基礎となる事実(必要性)が欠如している場合には、裁量権の逸脱として司法審査の対象となることを示した事例。答案上は、裁量権の逸脱・濫用の判断枠組み(事実誤認、目的外利用、必要性の欠如等)を具体化する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)335 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
農地の売渡を受けた者が賃借している宅地上に家屋を所有して居住していても、その家屋で飲食業と煙草小売業を営み、しかもその宅地が県道に沿い建物は県道に面して建てられ、その位置、構造、間取り等右営業を営むに適するようにできており、表面は県道に接していてすこしの空地もなく裏側には僅かな庭があるだけで農作物の脱穀、乾燥等をするに…
事件番号: 昭和29(オ)890 / 裁判年月日: 昭和31年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法令の拘束に反しない限り、裁量の性質(法規裁量・自由裁量)にかかわらず違法とはならない。また、行政機関内部の通達(選定基準)に反しても、直ちに当該処分が違法となるわけではなく、法令の趣旨に照らして判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人の所有する未墾地について、自作農創設特別措置法3…
事件番号: 昭和32(オ)440 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
未墾地買収においては、買収目的地の実測面積の表示を欠いた買収計画であつても、買収目的地の特定性が動かない限り、違法ではない。
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…