旧森林法による施業案を編成し主務庁の認可を受け戦時中のため実施に至らなかつたが、右施業案の実施上枢要な地位を占める土地であつて、これを失うことが施業案全体に重大な影響があり、施業案の目的完遂を困難らしめるような土地は(本判決および原判決参照)、採草の用に供されていても、これを自作農創設特別措置法にいう牧野に該当しないものと解すべきである。
自作農創設特別措置法上の牧野に該当しないとされた事例。
自作農創設特別措置法2条1項
判旨
自創法上の「牧野」とは、家畜の放牧・採草に供される土地を指すが、客観的な事実状態に照らし、植林の目的等に主として使用される土地はこれに該当しない。広大な林地の一部で、林業経営上枢要な地位を占め、採草地化が治山・治水上の悪影響を及ぼすような土地は、牧野としての買収対象から除外される。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法(自創法)2条1項所定の「牧野」の意義、及び広大な林地の一部について「植林の目的その他家畜の放牧及び採草以外の目的に主として使用される土地」として買収対象外となるかどうかの判断基準。
規範
自創法2条1項にいう「牧野」の意義は、同法制定の趣旨に副って解釈すべきである。土地の現況が放牧や採草に適していても、植林の目的その他家畜の放牧及び採草以外の目的に主として供され、又は供されるを適当とするものは、同項の除外規定に該当し、買収対象としての「牧野」には当たらない。この判断は、当該土地の「客観的な事実状態」を基盤としてなされるべきである。
重要事実
対象地は、面積約1万6千ヘクタールに及ぶ広大な山林(b山林)の一部である。所有者は森林法に基づく施業案の認可を受け、全地域を一施業地区として造林を計画していた。対象地は苗圃地や貯木場として最適であり、地理的・経済的条件から林業経営上枢要な地位を占めていた。戦時中の資材不足等で造林が遅延し、一時的に開墾等がなされたが、本来は森林計画に不可欠な土地であり、これを分離して採草地とすることは経営上不採算を招き、治山・治水上も悪影響を及ぼす状況にあった。
あてはめ
本件土地は、広大なb山林の林業開発において苗圃地や貯木場として最適であり、施業案全体の中で枢要な地位を占めている。地勢や経営経済上の関係からみて、本件土地を山林から分離することは後背地の施業を著しく困難にし、造林生産力の増進を阻むだけでなく、採草地化は治山・治水・水源涵養に悪影響を及ぼす。こうした客観的事実に照らせば、本件土地は「主として植林等の目的」に供されるべき土地といえ、放牧・採草を主目的とする「牧野」には該当しないと解される。
結論
本件土地は自創法2条1項の「牧野」に該当しないため、これに対する買収処分は違法である。
実務上の射程
土地の現況だけでなく、その土地が置かれた広域的な経営計画や地理的・経済的関連性といった「客観的事実状態」を重視する判断枠組みを示した。農地・牧野買収の文脈だけでなく、土地の公法上の性質決定において、個別箇所の現況のみならず一体的な利用状況や公共目的(治山・治水等)を考慮する際の指針となる。
事件番号: 昭和25(オ)23 / 裁判年月日: 昭和26年9月4日 / 結論: 棄却
土地の主たる使用目的が採草にある以上、松樹直径三、四寸位のものが五、六尺ないし八尺おき位に生立している事実は、その土地を牧野と解するに妨げとなるものではない。