従前一団地として放牧の用に供されていた土地であつても、土地所有者がその一部に植林を実施し、その結果、同部分の面積の九割強が立木地帯となり、各林相ごとに区分した場合の樹冠欝閉状態は三〇パーセント前後から一〇〇パーセントに及び、樹木の総材積は三、三〇〇石を数え、かつ樹林の配置が偏在しているため植林部分が牧野林として適切でない状況にある場合には、右部分は、主として植林の用に供されているものとして、自作農創設特別措置法にいう牧野にあたらないものと解すべきである。
一団地として牧野にあたるものとして買収計画の目的とされた土地の一部が牧野にあたらないとされた一事例
自作農創設特別措置法2条
判旨
自作農創設特別措置法(以下「自創法」)にいう「牧野」に該当するか否かは、土地の客観的状況と現実の使用状態に基づき、その主たる使用目的が放牧にあるか否かによって判断すべきである。一団の土地の一部であっても、植林の状態や樹冠の欝閉度からみて主として植林の用に供されている部分は、放牧と密接不可分な関係にない限り牧野に当たらない。
問題の所在(論点)
自創法に基づく買収対象となる「牧野」の意義、および一団の土地の一部が植林地となっている場合に、当該部分を切り離して牧野性を否定することの可否が問題となった。
規範
自創法における「牧野」の該否は、買収計画樹立当時における当該土地の「客観的状況」および「現実の使用状態」に基づき、その土地の「主たる使用目的」が何であるかによって決定される。一団の土地の一部が他と異なる目的で使用されている場合、当該部分が他の放牧地と密接不可分な関係にあると認められない限り、その部分の現況に即して個別に判断されるべきである。
重要事実
土地所有者である被上告人会社が、所有地のうち3,363番の土地に植林を実施した。買収計画樹立当時、当該土地は全面積の9割強が立木地帯となり、樹冠欝閉状態が30%から100%に達し、総材積も3,300石に及んでいた。上告人側は、当該地が昭和7年以降継続して放牧に供されており、牧舎も存在するため一団の土地として「牧野」にあたると主張して、農地買収計画の適法性を争った。
事件番号: 昭和31(オ)414 / 裁判年月日: 昭和35年4月8日 / 結論: 棄却
旧森林法による施業案を編成し主務庁の認可を受け戦時中のため実施に至らなかつたが、右施業案の実施上枢要な地位を占める土地であつて、これを失うことが施業案全体に重大な影響があり、施業案の目的完遂を困難らしめるような土地は(本判決および原判決参照)、採草の用に供されていても、これを自作農創設特別措置法にいう牧野に該当しないも…
あてはめ
本件3,363番の土地は、樹冠の欝閉状態や樹林の配置が放牧に適しておらず、客観的には主として植林の用に供されていたと認められる。また、放牧地としての他の部分と密接不可分な関係にあるともいえない。元賃借人による放牧が継続していたとしても、所有権取得後の被上告人による植林という客観的事実およびそれによる現実の使用状態の変化を妨げるものではない。したがって、当該部分は牧野にあたらない。
結論
本件土地の一部は、主たる使用目的が植林にあると認められるため、自創法にいう牧野には該当しない。
実務上の射程
行政法における「目的物」の性質決定において、一団の土地であっても現況に応じて部分的に性質を分断して認定する手法を示した。事実認定において、主観的な利用意図(継続的な放牧の継続)よりも、植林の密度や材積といった「客観的状況」を重視する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和31(オ)853 / 裁判年月日: 昭和33年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地買収において対象地が牧野に該当するかは、土地の現況が採草等の用に供されているかにより判断され、また、買収範囲の特定は測量図面等の添付により客観的に可能であれば有効である。 第1 事案の概要:本件は、行政庁による土地の買収処分に対し、上告人がその無効を主張して争った事案である。上告人は、(1)対…