判旨
農地買収において対象地が牧野に該当するかは、土地の現況が採草等の用に供されているかにより判断され、また、買収範囲の特定は測量図面等の添付により客観的に可能であれば有効である。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法等に基づく農地買収処分において、(1)土地が「牧野」に該当すると判断されるための基準、および(2)買収対象となる区域の特定が有効とされるための要件が問題となる。
規範
1. 土地が牧野(小作牧野)に該当するか否かは、当該土地の現況に基づき、全体として家畜の放牧又は採草の用に供されている実態があるかによって判断する。2. 農地買収計画における対象地の特定は、買収計画書に測量図面を添付するなどして、現地において客観的にその範囲を確定し得る状態にあれば足りる。
重要事実
本件は、行政庁による土地の買収処分に対し、上告人がその無効を主張して争った事案である。上告人は、(1)対象地(5)が萱生地であって牧野ではないこと、および(2)対象地(2)(13)について買収区域の範囲が不明確であり買収は無効であることを主張した。原審の認定によれば、(1)の土地は一部に幼令雑木林があるものの、他は萱を混生した草生地で採草の用に供されており、(2)については現地測量に基づき作成された図面が買収計画書に添付され縦覧に供されていた。
あてはめ
1. 対象地(5)について、東南側の沢沿いに一部雑木林が存在するものの、その他の地域は「萱を混生した草生地」であり、実際に「採草の用に供されている」実態がある。したがって、土地の現況に照らせば全体として牧野(小作牧野)と認めるのが相当である。2. 対象地(2)(13)について、買収計画に際して現地で「測量をして土地の範囲を確定」し、その「図面を作成」した上で、買収計画書の縦覧時に当該図面を添付している。この手続により買収区域の範囲は客観的に特定されているといえる。
結論
1. 対象地(5)を小作牧野と認定した点に違法はない。2. 買収区域は特定されており、買収処分を無効とする理由は認められない。上告棄却。
実務上の射程
行政処分の対象の特定に関する判例である。公用収用や農地買収などの場面で、処分の対象範囲が不明確であるとして無効を主張する場合の反論(図面添付等による特定の立証)に活用できる。また、土地の性質決定(牧野か否か等)は、部分的な状況ではなく全体の現況や利用目的から判断すべきという点も実務上重要である。
事件番号: 昭和29(オ)671 / 裁判年月日: 昭和30年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法40条の2第4項5号の「牧野」に該当するか否かは、所有者の主観的意図のみならず、行政庁の認可を受けた施業案等の客観的事実や土地の物理的状況(林業適地性)を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:本件土地は、買収計画当時に未だ植林は実施されていなかった。しかし、所有者は北海…