一 土地が溜池または溝という形状において存在する場合は、土地そのものが農業用施設であつて、自作農創設特別措置法第一五条第一項第一号によつて政府はこれを買収することができる。 二 訴願裁決期間経過後の裁決も違法ではない。
一 溜池又は溝は自作農創設特別措置法第一五条第一項第一号にいういわゆる農業用施設に含まれるか 二 訴願裁決期間経過後の裁決の適否
自作農創設特別措置法(昭和24年6月法律215号による改正前のもの)15条1項,自作農創設特別措置法7条5項,自作農創設特別措置法15条3項
判旨
農業用施設等の買収は農地の買収と時間的に同時である必要はなく、施設そのものと敷地が不可分な場合は土地の買収をもって施設の買収と認めることができる。また、高率な使用料が農業経営の安定を阻害し、地主的地位の維持に繋がっている場合は、自創法1条の目的に鑑み、当該施設の買収は適法である。
問題の所在(論点)
1. 自創法に基づく農業用施設の買収は、農地の買収と同時になされる必要があるか。2. 施設そのものではなく、施設の「敷地」を買収の対象とすることができるか。3. 施設の利用関係が不公正である場合に、当該施設を買収することは自創法1条の目的に合致するか。
規範
1. 自作農創設特別措置法15条1項に基づく農業用施設の買収は、農地の買収に付随するものであるが、時間的に同時であることを要しない。2. 農業用施設(溜池、溝等)が土地と一体不可分な形状で存在する場合、土地そのものを農業用施設として買収の対象とすることができる。3. 法の目的(1条)は農業生産力の増進に留まらず、耕作者の地位の安定と労働成果の公正な享受にある。したがって、施設利用料が著しく高率で農業経営を不安定にし、所有者が地主的地位に安住している実態がある場合は、買収の必要性が認められる。
重要事実
上告人等17名が共有する本件土地(溜池および溝)について、行政庁が自創法に基づき買収計画を定めた。上告人等は、(1)農地の買収から遅れてなされた施設買収は違法である、(2)法15条は施設の買収を認めるものであり敷地(土地)の買収を認めるものではない、(3)買収は法の目的に照らし不要である、と主張した。事実関係として、本件溜池等の利用者は40名以上の耕作者であり、上告人等は「弁米」と称して近隣相場より著しく高率な利用料を徴収し、永年にわたり紛争が続いていた。
あてはめ
1. 改正前自創法下においても、農地の売渡後に自作農となった者の申請に基づき施設を買収することは許容され、同時性は要求されない。2. 本件土地は溜池および溝という形状で存在し、施設が土地から離れて独立の所有権の対象となるものではない。したがって、本件土地そのものを農業用施設と解して買収の対象とすることに支障はない。3. 上告人等が徴収する高率な弁米(毎年玄米18石余)は、受益農民の農業経営を不安定にし、耕作者が労働成果を享受することを妨げている。これは上告人等を地主的地位に安住させるものであり、かかる事態を解消するための買収は法の目的に適う。
結論
本件買収計画および訴願裁決に違法はなく、上告を棄却する。また、裁決期間の経過は訓示的規定にすぎず、裁決が遅延したことをもって直ちに違法とはならない。
実務上の射程
行政処分における目的適合性の判断や、公用収用的な場面での「施設」と「土地」の一体性評価において参照しうる。特に、法の目的に照らした裁量権の行使(買収の必要性判断)が、実質的な経済的格差や支配関係の解消を根拠として正当化される点に注目すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)903 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条1項2号に基づく宅地の附帯買収が認められるためには、当該宅地が売渡農地の経営に必要であることが必要である。この「必要」性の判断においては、全農地の経営における売渡農地の重要度や法の目的に照らし、耕作農家の地位安定に適合するか否かを基準とすべきである。 第1 事案の概要:農…
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…