市町村農業委員会は、買収目的地が自作農創設特別措置法施行令第八条第二号にいう「鉱山又は炭坑附近の農地で陥没の虞あるもの」に該当するかどうかの認定につき専権を有するものではなく、委員会がその認定を誤り買収より除外すべき農地につき買収計画を定めた場合には、右計画は違法である。
自作農創設特別措置法施行令第八条第二号という「鉱山又は炭坑附近の農地で陥没の虞あるもの」の認定と市町村農業委員会の裁量権
行政事件訴訟特例法1条,自作農創設特別措置法施行令8条2号
判旨
市町村農業委員会による自作農創設のための農地買収計画において、買収から除外すべき農地に該当するか否かの認定は、委員会の専権に属するものではなく、その認定に誤りがあれば当該処分は違法として取り消し得る。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法に基づく買収除外事由の認定について、農業委員会が専権(裁量)を有するのか、あるいは誤った認定に基づく処分は違法として司法審査の対象となるのか。
規範
行政庁に一定の認定権限が与えられている場合であっても、その処分が国民の権利を強制的に奪う性質(侵害的処分)を有する場合、当該認定は行政庁の専権(裁量)に属するものではない。客観的事実に照らして認定に誤りがあり、本来除外すべき対象を処分に含めたときは、当該処分は違法となる。
重要事実
上告人は、自作農創設特別措置法に基づき、市町村農業委員会から農地買収計画の決定を受けた。同法5条8号及び施行令8条2号によれば、鉱山附近の陥没の恐れがある農地など「自作農を創設するに不相当」な農地は買収対象から除外される。上告人は、当該農地が陥没の恐れがある除外対象であるにもかかわらず買収計画が定められたとして、法の解釈誤りを主張した。
あてはめ
農地買収処分は、所有者の意に反してその権利を奪うという強力な侵害的性格を有する。したがって、農業委員会が陥没の恐れ等の除外事由について認定を行う際、その判断は専権的なものとは解されない。事実上、買収から除外すべき農地であるにもかかわらず、これを誤って買収計画に含めたのであれば、法解釈および事実認定の誤りとして取消事由を構成する。本件において、原審が同様の解釈に立ち、委員会の専権を否定した判断は妥当である。
結論
農業委員会の認定は専権ではなく、認定を誤ってなされた買収計画は違法である。原判決に法の解釈誤りはなく、上告を棄却する。
実務上の射程
行政庁の裁量権の限界に関する初期の重要判決。侵害的行政処分において、要件該当性の判断が行政庁の専権(自由裁量)に属するか否かが争点となる際、権利侵害の重大性を理由に専権を否定し、司法審査を及ぼす論拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…