未墾地買収計画が昭和二四年一月一八日附二四開第六三号農林次官通達「開拓適地選定の基準に関する件」に違反しているというだけでは、直ちに右買収計画が違法であるとはいえない。
昭和二四年一月一八日附二四開第六三号農林次官通達「開拓適地選定の基準に関する件」違反の有無と未墾地買収計画の適否
自作農創設特別措置法30条,自作農創設特別措置法31条1項
判旨
通達は行政機関内部における権限行使の指針にすぎず、法令としての効力を有しない。したがって、行政処分が通達に違反していてもそれだけで直ちに違法とはならず、処分の適法性は当該処分の根拠法律の規定・趣旨に適合するか否かによって判断される。
問題の所在(論点)
行政機関が発出した通達に法規としての性質(法規性)が認められるか。また、処分が通達に違反していることが、直ちに当該処分の取消事由(違法性)となるか。
規範
通達は、上級行政機関が下級行政機関に対し、その権限行使の指針を示すものにすぎず、法令ではない。したがって、処分の適法性は、通達への適合性ではなく、もっぱら根拠法律の規定及びその趣旨に適合するか否かによって判断されるべきである。
重要事実
農林次官が発出した「開拓適地選定の基準に関する件」という通達に基づき、未墾地の買収計画が策定され、買収処分がなされた。上告人は、当該買収計画が右通達に定める基準に違反しているため、当該買収処分は違法であると主張して争った。
あてはめ
本件通達は農林省令の形式を備えておらず、農林次官に法令制定権限もなく、法律による委任も存在しない。したがって、本件通達は法令ではない。本件買収計画の適否については、通達違反の有無ではなく、自作農創設特別措置法の趣旨(土地の農業上利用増進等)に照らして判断すべきである。本件土地は開拓に適する土地であると認められる以上、同法の趣旨に沿うものであり、通達違反の主張は処分の違法性を基礎付けない。
結論
通達は法令ではなく、買収計画が通達に違反して定められたとしても、それだけで処分の違法が生じることはない。
実務上の射程
行政立法のうち「行政規則(通達・基準)」の法的性質に関する基本判例である。答案では、通達違反のみを理由に処分の違法を主張する起案に対し、通達に外部的効力(法規性)がないことを指摘し、あくまで根拠法の解釈・適用として違法性を論じるべきことを示す際に引用する。
事件番号: 昭和26(オ)660 / 裁判年月日: 昭和28年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政手続上の違法があったとしても、当事者が実質的に争う機会を得るなどして不利益を受けていない場合には、当該違法は処分の取消事由や無効原因とはならない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画が策定された際、その公告に係る縦覧期間に違法があった。しかし、原告(土地所有者)は当該縦…
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…
事件番号: 昭和25(オ)18 / 裁判年月日: 昭和27年4月25日 / 結論: 棄却
訴願裁決書の謄本が郵便により配達された以上、特段の事情のないかぎり、右謄本の配達を受けた日に右裁決のあつたことを知つたものと認めるべく、行政処分および訴願裁決の取消または変更を求める訴の出訴期間は、その日から起算すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。