判旨
行政手続上の違法があったとしても、当事者が実質的に争う機会を得るなどして不利益を受けていない場合には、当該違法は処分の取消事由や無効原因とはならない。
問題の所在(論点)
行政処分の公告・縦覧手続に期間不足等の違法がある場合、そのことのみをもって買収計画や買収行為が当然に無効となるか。
規範
行政処分の過程において手続き上の違法が存在する場合であっても、その違法が処分の結果に影響を及ぼさず、かつ相手方の手続的権利が実質的に保障されていると認められるときは、当該処分の効力を否定すべき重大な違法とは認められない。
重要事実
自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画が策定された際、その公告に係る縦覧期間に違法があった。しかし、原告(土地所有者)は当該縦覧期間中に陳情書を提出しており、その陳情書は異議申立てとして適切に取り扱われていた。
あてはめ
本件では、縦覧期間の定めに違法があったとしても、原告は期間内に陳情書を提出できており、それが異議申立てとして機能している。したがって、原告は手続上の不備によって不利益を被ったとはいえず、手続の目的である当事者への権利保障は実質的に果たされている。このような状況下での手続違法は、買収計画等の効力を左右するほど重大なものとは評価できない。
結論
本件公告の違法は、買収計画ないし買収行為自体の無効を来たすものとは認められない。
実務上の射程
手続的瑕疵の治癒や、瑕疵の軽微性を理由とする処分の取消し制限の議論において活用できる。特に行政手続法等の規定に反する場合であっても、防御権の行使が実質的に妨げられていない場合に処分の維持を基礎付ける論理として有効である。
事件番号: 昭和29(オ)258 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
遡及買収指示手続に違法があつても、このため、右指示に基き定められた農地買収計画が違法となることはない。
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
事件番号: 昭和33(オ)446 / 裁判年月日: 昭和36年5月4日 / 結論: 破棄差戻
一 村農業委員会の議決を経ないで作成された農地買収計画が公告され、所定の期間縦覧に供され、右期間の満了前に原案どおり買収計画を樹立する旨の委員会の議決が成立し、しかも農地所有者が計画の樹立を知り行政上の不服手段を尽し得たという事実関係の下においては、たとえ、公告当時においては計画樹立につき委員会の議決がなされていなかつ…
事件番号: 昭和24(オ)129 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が買収計画への異議に対し法定期間内に決定を行わず、事実上計画から除外したとしても、正式な決定がない限り買収しないことが法律上確定したとはいえず、再度同一の買収計画を立てることは直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年3月になされた農地買収計画に対し異議を申し立てた。農…
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…