一 村農業委員会の議決を経ないで作成された農地買収計画が公告され、所定の期間縦覧に供され、右期間の満了前に原案どおり買収計画を樹立する旨の委員会の議決が成立し、しかも農地所有者が計画の樹立を知り行政上の不服手段を尽し得たという事実関係の下においては、たとえ、公告当時においては計画樹立につき委員会の議決がなされていなかつたという瑕疵があつても、農地買収計画が存在しなかつたということはできない。 二 右事実関係の下においては、買収計画の公告当時計画樹立につき委員会の議決がなかつたという瑕疵は、農地所有者に対する関係においては、治癒されたものと解すべきである。
一 行政処分が不存在と認められない事例 二 行政処分の瑕疵が治癒されたものと認められた事例
自作農創設特別措置法6条,行政事件訴訟特例法1条
判旨
行政処分における公告手続に不備があっても、処分自体が不存在とはいえず、また、当事者が処分の内容を知って不服申立手続を尽くした場合には、その違法は治癒される。
問題の所在(論点)
行政処分の決定後に改めて公告がなされず、縦覧期間も不足していたという手続上の瑕疵がある場合、当該処分の効力はどうなるか。また、当事者が不服申立手続を尽くした場合、その瑕疵は治癒されるか。
規範
行政処分の成立要件としての公告に瑕疵がある場合であっても、直ちに処分が不存在(無効)となるわけではない。また、当該手続の趣旨が不服申立の機会の保障にあることに鑑み、当事者が現に処分の内容を了知して適法な期間内に不服申立手続を行い、権利救済の面で特段の不利益を被っていないのであれば、当該手続上の違法は治癒され、以後その違法を争うことは許されない。
重要事実
農地委員会が上告人所有地の買収計画を樹立する際、計画決定後の正式な公告・縦覧を行わず、決定前の原案段階での公告・縦覧(10日間)に留めた。しかし、上告人は本件計画の樹立を知り、所定の期間内に異議申立て及び訴願の手続を全て経た上で、本件買収計画の取消訴訟を提起した。
事件番号: 昭和32(オ)116 / 裁判年月日: 昭和33年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に瑕疵がある場合でも、その後に正当な手続を経て瑕疵が補完され、処分時において適法な状態が確保されているならば、当該処分は有効なものとして存続し得る。 第1 事案の概要:農地委員会が土地の買収計画を定め、異議申立を却下した後、上告人は県農地委員会へ訴願を提起した。県農地委員会は法定期間経過後…
あてはめ
本件公告は、計画決定後の再公告の欠如や期間不足の点で不完全であり違法である。しかし、これにより買収計画という行政処分が不存在になるとまではいえない。さらに、上告人は計画を了知して期間内に異議申立て及び訴願を行っており、不服申立の手段を尽くしている。したがって、権利救済上の実質的な不利益はなく、公告の不備という違法は上告人との関係では治癒されたというべきである。
結論
本件買収計画は行政処分として有効に存在しており、手続上の違法は治癒されているため、もはや公告の瑕疵を理由に処分の効力を争うことはできない。
実務上の射程
行政手続の瑕疵の治癒に関するリーディングケース。手続規定の趣旨(本件では告知・聴聞の機会保障)が実質的に達成され、相手方の防御権が侵害されていない場合に、処分の維持を図る理論として答案上活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)660 / 裁判年月日: 昭和28年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政手続上の違法があったとしても、当事者が実質的に争う機会を得るなどして不利益を受けていない場合には、当該違法は処分の取消事由や無効原因とはならない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画が策定された際、その公告に係る縦覧期間に違法があった。しかし、原告(土地所有者)は当該縦…
事件番号: 昭和33(オ)653 / 裁判年月日: 昭和34年4月9日 / 結論: 棄却
一 一審において取り寄せ法廷に顕出された証拠書類は、すでに還付ずみのものであつても、控訴審において当事者が一審の口頭弁論の結果を陳述することにより控訴審に顕出されたこととなるから、控訴審において改めて取り寄せ法廷に顕出することなくこれを証拠として採用することができる。 二 行政事件訴訟特例法第九条による職権証拠調の結果…
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
事件番号: 昭和32(オ)440 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
未墾地買収においては、買収目的地の実測面積の表示を欠いた買収計画であつても、買収目的地の特定性が動かない限り、違法ではない。