一 一審において取り寄せ法廷に顕出された証拠書類は、すでに還付ずみのものであつても、控訴審において当事者が一審の口頭弁論の結果を陳述することにより控訴審に顕出されたこととなるから、控訴審において改めて取り寄せ法廷に顕出することなくこれを証拠として採用することができる。 二 行政事件訴訟特例法第九条による職権証拠調の結果につき当事者の意見を聴かなかつたという違法は、責問権の放棄により治癒される。
一 一審において取り寄せ法廷に顕出された証拠書類であつてすでに還付ずみのものを控訴審において改めて取り寄せ法廷に顕出することなく証拠として採用することの適否。 二 行政事件訴訟特例法第九条但書に反する違法と責問権の放棄による治癒。
民訴法377条,民訴法141条,行政事件訴訟特例法9条
判旨
控訴審において当事者が第一審の口頭弁論の結果を陳述した場合、第一審で提出された全証拠資料は控訴審にも顕出されたものとみなされる。また、職権証拠調べの手続に瑕疵があっても、当事者が遅滞なく異議を述べなければ責問権の放棄により治癒される。
問題の所在(論点)
1. 第一審で顕出され、後に還付された証拠書類について、控訴審で改めて取寄せ・顕出手続を経ることなく事実認定の資料とすることができるか。 2. 職権証拠調べの結果に関する意見聴取を怠った手続的瑕疵は、当事者の異議がない場合に治癒されるか。
規範
1. 控訴審において当事者が第一審における口頭弁論の結果を陳述したときは、第一審において適法に提出された一切の証拠資料は、当然に控訴審においても顕出されたものとみなされ、控訴裁判所はこれを事実認定の資料とすることができる。 2. 裁判所が証拠調べの結果について当事者の意見を聴取すべき手続規定(旧行政事件訴訟特例法9条但書)に違反した場合であっても、当事者が遅滞なく異議を述べないときは、責問権の放棄(民事訴訟法上の原則)により、当該手続上の瑕疵は治癒される。
重要事実
事件番号: 昭和33(オ)446 / 裁判年月日: 昭和36年5月4日 / 結論: 破棄差戻
一 村農業委員会の議決を経ないで作成された農地買収計画が公告され、所定の期間縦覧に供され、右期間の満了前に原案どおり買収計画を樹立する旨の委員会の議決が成立し、しかも農地所有者が計画の樹立を知り行政上の不服手段を尽し得たという事実関係の下においては、たとえ、公告当時においては計画樹立につき委員会の議決がなされていなかつ…
第一審で農業委員会の会議録および附属書類(議案)が証拠として取寄せられ、法廷に顕出された。控訴審において、これらの証拠書類は既に還付されていたが、控訴審の口頭弁論において当事者双方が「第一審の口頭弁論の結果」を陳述した。また、職権証拠調べの結果について、裁判所が当事者の意見を聴取した記録がなかったが、当事者からも異議は出されていなかった。上告人は、還付済みの証拠を再顕出せずに事実認定の資料とした点や、意見聴取を欠いた点の違法を主張した。
あてはめ
1. 本件では、原審(控訴審)の口頭弁論調書に、当事者双方が第一審の口頭弁論の結果を陳述した旨の記載がある。この陳述により、第一審で顕出されていた会議録等は控訴審においても有効に顕出されたものと解されるため、改めて取寄せ手続を要しない。 2. また、証拠調べ結果に関する意見聴取を欠いた点については、記録上当事者が遅滞なく異議を述べた形跡が認められない。したがって、仮に手続上の違法があったとしても、責問権の放棄・喪失によってその瑕疵は治癒されたと判断される。
結論
1. 控訴審で第一審の弁論結果を陳述すれば、還付済みの証拠も再度の取寄せなしに証拠資料とできる。 2. 手続規定の違法は、当事者の異議がない限り責問権の放棄により治癒される。
実務上の射程
控訴審の続審的性格(民訴法297条、298条1項)を確認する重要な判例。答案上は、控訴審の証拠調べの簡略化や、手続的瑕疵における責問権(民訴法90条)の適用の限界を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)64 / 裁判年月日: 昭和36年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収計画における基準日時点の住所地の認定について、客観的な事実に基づき認定された原審の判断を維持し、仮装譲渡の主張についても証拠の取捨選択の合理性を認めた。 第1 事案の概要:上告人は、本件農地の一部について訴外Dへの所有権移転登記が仮装のものであり、真実の所有者は上告人であると主張した。ま…
事件番号: 昭和32(オ)116 / 裁判年月日: 昭和33年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に瑕疵がある場合でも、その後に正当な手続を経て瑕疵が補完され、処分時において適法な状態が確保されているならば、当該処分は有効なものとして存続し得る。 第1 事案の概要:農地委員会が土地の買収計画を定め、異議申立を却下した後、上告人は県農地委員会へ訴願を提起した。県農地委員会は法定期間経過後…
事件番号: 昭和29(オ)258 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
遡及買収指示手続に違法があつても、このため、右指示に基き定められた農地買収計画が違法となることはない。