遡及買収指示手続に違法があつても、このため、右指示に基き定められた農地買収計画が違法となることはない。
遡及買収指示手続の違法は右指示に基き定められた農地買収計画を違法ならしめるか
自作農創設特別措置法6条の3
判旨
先行する行政処分(買収指示)に手続上の瑕疵があったとしても、後続の処分(買収計画)自体に独自の瑕疵がない限り、後続処分の違法事由にはならない。
問題の所在(論点)
先行する行政処分(買収指示)の手続に瑕疵がある場合、それが後続の行政処分(買収計画)の違法性を基礎付けるか(違法性の承継の有無)。
規範
先行する行政手続に瑕疵があったとしても、そのことが当然に後続の行政処分の効力に影響を及ぼすものではない。後続の処分が違法となるためには、当該後続処分自体に独自の瑕疵が認められるか、あるいは先行処分の瑕疵が後続処分を違法ならしめるほどに重大なものでなければならない。
重要事実
県農業委員会が買収指示の手続を行った際、上告人が主張するような手続上の瑕疵が存在した。しかし、その後になされた農地の買収計画の策定自体については、手続的にも内容的にも特段の瑕疵は認められなかった。
あてはめ
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
本件において、県農業委員会の買収指示手続に仮に指摘のような瑕疵があったとしても、それは買収指示段階の事由に留まる。後続の買収計画自体に独自の瑕疵が認められない以上、買収計画を違法と評価することはできない。したがって、先行処分の瑕疵を理由に買収計画の取り消しを求めることは認められない。
結論
買収計画自体に瑕疵がない限り、先行する買収指示の手続的瑕疵は買収計画を違法とする理由にはならない。
実務上の射程
行政手続が段階的に進行する場合において、各段階の処分の独立性を重視する立場を示す。違法性の承継が認められるための要件(処分間の目的の同一性等)を検討する際、本判決は承継を否定する一つの例証として機能する。
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和26(オ)660 / 裁判年月日: 昭和28年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政手続上の違法があったとしても、当事者が実質的に争う機会を得るなどして不利益を受けていない場合には、当該違法は処分の取消事由や無効原因とはならない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画が策定された際、その公告に係る縦覧期間に違法があった。しかし、原告(土地所有者)は当該縦…
事件番号: 昭和24(オ)129 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が買収計画への異議に対し法定期間内に決定を行わず、事実上計画から除外したとしても、正式な決定がない限り買収しないことが法律上確定したとはいえず、再度同一の買収計画を立てることは直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年3月になされた農地買収計画に対し異議を申し立てた。農…
事件番号: 昭和30(オ)138 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法律上の手続規定に違反してなされた場合であっても、その瑕疵が当然に処分を無効とするものではなく、出訴期間内に取り消されない限り、公定力により有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収令書が真の所有者である上告人ではなく、…