訴願裁決書の謄本が郵便により配達された以上、特段の事情のないかぎり、右謄本の配達を受けた日に右裁決のあつたことを知つたものと認めるべく、行政処分および訴願裁決の取消または変更を求める訴の出訴期間は、その日から起算すべきである。
行政処分の取消または変更を求める訴の出訴期間の起算日
行政事件訴訟特例法5条1項4項
判旨
訴願裁決書等の謄本が適法に送達された場合、特段の事情がない限り、受領者は送達を受けた日に当該裁決があったことを知ったものと推定される。この「知った日」を起点として出訴期間を計算することは正当であり、期間経過後の訴えは不適法として退けられる。
問題の所在(論点)
行政事件における出訴期間の起算点に関し、裁決書謄本が住所に配達されたことをもって、直ちに「裁決のあったことを知った」と認定できるか。また、受領者が現実に内容を認識していない場合の取扱いが問題となる。
規範
行政処分に対する出訴期間の起算点となる「処分(裁決)があったことを知った日」とは、処分の内容を具体的に認識し得る状態に置かれた日を指す。裁決書謄本が適法に配達された場合には、特段の事情のない限り、その配達日に裁決があったことを知ったものと認めるのが相当である。
重要事実
農地買収計画に関する訴願について、青森県農地委員会は裁決を行い、その裁決書謄本を昭和23年5月27日に発送した。翌28日、当該謄本は上告人(及びその法定代理人)の住所に配達された。上告人は、当時旅行中で不在であった等の事情を主張し、謄本の受領をもって「知った日」とし出訴期間を起算するのは違法であると主張して、買収計画の取消しを求めて出訴した。
事件番号: 昭和26(オ)392 / 裁判年月日: 昭和27年11月20日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第四七条の二にいう「当事者がその処分のあつたことを知つた日」とは、当事者が書類の交付、口頭の告知その他の方法により処分を現実に知つた日を指すのであつて、抽象的な知り得べかりし日を意味するものではない。
あてはめ
本件では、郵便局の証明書により裁決書謄本が昭和23年5月28日に上告人らの住所へ適法に配達された事実が認められる。上告人は旅行不在であったと主張するが、これは原審で主張されておらず、かつ原判決でも認定されていない事実である。したがって、客観的に配達された事実がある以上、「特段の事情」は認められず、配達日に裁決の内容を知り得る状態にあったといえる。よって、同日を起算点として出訴期間を計算した原審の判断に違法はない。
結論
裁決書謄本が適法に配達された以上、特段の事情がない限りその日に裁決を知ったものとみなされ、それに基づき出訴期間が経過した後の訴えは不適法である。本件上告は棄却される。
実務上の射程
行政事件訴訟法における「処分があったことを知った日」の解釈(客観的な知悉可能性による推定)として機能する。答案上は、送達が完了している事実を摘示した上で、本判例を引用し「特段の事情」の有無を検討する。本人不在等の個人的事情が直ちに「特段の事情」に当たるかは厳格に判断される傾向にある点に留意が必要である。
事件番号: 昭和24(オ)161 / 裁判年月日: 昭和24年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地買収計画は、それ自体が法律上の効果を伴う厳格な行政処分とは言えないとしても、法律が異議・訴願の手続を定めている以上、争訟手続においては行政処分に類する性質を持つ。したがって、その取消訴訟の出訴期間は、特例法に従い訴願に対する裁決を知った日から起算されるべきであり、その後の買収令書交付を待つもの…
事件番号: 昭和25(オ)341 / 裁判年月日: 昭和27年4月18日 / 結論: 破棄差戻
行政事件訴訟特例法施行の日に農地買収計画に対する異議申立期間が満了し、当時の交通事情等により訴訟関係人らが同法の内容を知り得なかつた事情があるならば、同法施行後にかいても、右買収計画の取消を求める訴を提起するについて異議、訴願を経ない正当な事由があるものというべきである。
事件番号: 昭和25(オ)208 / 裁判年月日: 昭和26年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の効力発生時期につき、処分を記載した書面の到達が必要であるとし、証拠に基づく到達事実の認定に違法はないとした。 第1 事案の概要:本件農地に対する買収処分がなされた際、買収令書が上告人に対して送達された。原審は、証拠に基づき、当該買収令書が3月5日に上告人に到達したと認定した。これに対し上…