農地委員会が農地買収計画を定めた後、小作人と農地所有者との間の協定により所有者の自作を相当と認め、右買収計画を取り消したが、所有者が右協定に違背したものと認められる場合は、農地委員会が前の買収計画と同じ内容の買収計画を定めても違法ではない。
農地委員会がひとたび取り消した農地買収計画と同じ内容の買収計画を定めても適法とされる一事例
自作農創設特別措置法6条
判旨
行政庁が一度取り消した処分と同一の処分を再度行うことは、常に違法となるわけではなく、取消しの原因となった事情の変化等に照らし正当な理由がある場合には許容される。
問題の所在(論点)
行政庁が一度行った処分を自ら取り消した後、再び同一の対象に対して同一内容の処分を行うことが、一事不再理の原則に反し違法となるか。
規範
行政処分について一度取消しがなされた後であっても、再度の処分を禁止する一事不再理の原則が常に適用されるものではない。先行処分の取消しが特定の事由(相手方の義務履行の期待等)に基づいていた場合において、その前提となる事由が事後的に消滅または変更したときは、同一対象に対して再度同一内容の処分を行うことは違法とはならない。
重要事実
農地委員会が本件農地について買収計画を定めたが、上告人と小作人との間で「上告人が自作する」旨の協定が成立したため、委員会は同計画を取り消した。しかし、その後上告人が右協定に違背した事実が認められたため、委員会は再度、本件農地について同一の買収計画を定めた。
事件番号: 昭和27(オ)846 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】買収計画が協定を理由として取り消された場合であっても、当該協定の不履行があったときは、再度同一の対象に対して買収計画を立てることは違法ではない。 第1 事案の概要:農地の買収計画に関し、当事者間での協定(合意)が成立したことを理由として、一度は買収計画が取り消された。しかし、その後当該協定が履行さ…
あてはめ
本件における先行買収計画の取消しは、上告人と小作人との協定に基づき、上告人の自作を相当と認めたために行われたものである。しかし、取消し後に上告人が当該協定に違背した以上、取消しの前提となった事情が失われている。したがって、農地委員会が再び買収計画を定めたことは、適正な農地調整という目的のために必要かつ合理的な理由があり、一事不再理の原則に反するような違法性は認められない。
結論
行政庁が処分を取り消した後に再度の処分を行うことは常に違法ではなく、本件のような事情変更がある場合には適法である。
実務上の射程
行政上の再処分の可否に関するリーディングケースである。答案では、一度なされた行政行為の拘束力(特に不可変更力との違い)や一事不再理の適用の有無が問題となる場面で、事情変更や義務違反の有無を考慮要素とする規範として引用できる。
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和40(行ツ)103 / 裁判年月日: 昭和42年9月26日 / 結論: 破棄自判
宅地買収計画を取り消す旨の異議決定が確定すれば、買収の申請は当然に効力を失うものと解すべきであつて、右買収の申請に基づき再度樹立された宅地買収計画は、違法である。
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…