誤つて二重に農地買収計画が樹立された場合、いずれか一方が違法であり無効であることは勿論であるが、後の計画が違法であるとは断定できない。
誤つて二重に農地買収計画が樹立された場合に後の計画が違法とされなかつた事例
自作農創設特別措置法6条
判旨
同一の土地に対し二重に買収計画が定められた場合、後の計画が先行する計画を訂正・取消す趣旨を含むのであれば適法であり、先行する計画自体が違法である場合も後の計画が当然に違法となるわけではない。
問題の所在(論点)
同一の土地について二重に買収計画が定められた場合、後に行われた買収計画は二重処分の禁止に触れ、当然に違法となるか。
規範
行政庁が同一の対象に対し二重に行政処分(買収計画等)を行った場合、後の処分が直ちに違法となるわけではない。後の処分が前の処分を訂正する意味でなされた場合には、前の処分を取り消す趣旨が含まれるため、二重処分には当たらない。また、仮に誤って二重に処分がなされた場合であっても、先行する処分が違法・無効であるならば、後行処分を違法とする必要はない。
重要事実
新潟県農地委員会は、上告人所有の土地について、昭和23年3月4日に「農地」として買収計画を定め、次いで同年5月12日に「牧野」として本件買収計画を定めた。上告人は、同一土地に対する二重の買収計画であり違法であると主張して争ったが、原審は先行する農地としての買収計画は違法であると判断していた。
あてはめ
行政庁が後の計画を定める際、それが先行する計画の訂正を目的とする場合は、先行計画の取消しの意思表示が包含されていると解される。本件において、先行する3月の計画は既に別件で違法と判断されており、適法な先行処分が存在しない以上、5月の計画(本件計画)を「二重買収」として違法視する法的根拠はない。したがって、行政庁の錯誤や訂正の趣旨を考慮せず、後の計画を直ちに違法と断定することはできない。
結論
本件買収計画は違法ではなく、上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の撤回や変更が明示的になされず、内容の矛盾する後続処分がなされた場合の処分の効力を判断する際の指針となる。答案上は、先行処分の有効性を前提に後続処分の性質(取消しの包含等)を検討する論理構成に活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)746 / 裁判年月日: 昭和33年5月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収計画の適否は、その計画が定められた時点の事実関係に基づき判断されるべきであり、過去の買収処分において買収されなかった事実のみをもって、後の買収処分が違法となることはない。 第1 事案の概要:上告人は仙台市に居住する大学教授であり、松山市内の農地を所有していた。昭和22年、愛媛県知事は上告…
事件番号: 昭和26(オ)660 / 裁判年月日: 昭和28年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政手続上の違法があったとしても、当事者が実質的に争う機会を得るなどして不利益を受けていない場合には、当該違法は処分の取消事由や無効原因とはならない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画が策定された際、その公告に係る縦覧期間に違法があった。しかし、原告(土地所有者)は当該縦…