一 農地買収計画の取消訴訟が係属中であつても、当初計画を定めた農地委員会は、その計画を取り消すことができないことはない。 二 さきに定められた買収計画と相牴触する買収計画を定めた場合は、特段の事情のないかぎり、さきの計画は取り消されたものと解すべきである。
一 農地買収計画について訴訟係属中における計画取消の可否 二 二重に買収計画が定められた場合の二度目の計画の趣旨
自作農創設特別措置法6条
判旨
行政庁は、処分の取消訴訟が継続中であっても、自らその誤りを認めた場合には職権で当該処分を取り消すことができ、また、前の処分と抵触する後の処分が適法になされたときは、前の処分は当然に職権消滅したものと解される。
問題の所在(論点)
行政処分の取消訴訟が係属している間であっても、処分庁は当該処分を職権で取り消すことができるか。また、前の処分と抵触する後の処分がなされた場合、公告等の明示的な手続なくして前の処分は消滅するか。
規範
1. 処分庁は、当該処分につき異議申立て、不服申立て、または取消訴訟が係属中であっても、特段の事情がない限り、自らその誤りを認めて職権でこれを取り消すことができる。2. 後の行政処分が前の処分と内容的に相抵触する形でなされた場合には、特段の事情がない限り、後の処分の成立によって前の処分は当然に職権で取り消されたものと解するのが相当である。
重要事実
青森市農業委員会は、昭和25年に本件土地の買収計画を定めたが、所有者の誤認を理由に当該計画の取消訴訟が係属中であった。委員会は自ら誤りを認め、当初の計画につき公告による取消手続を経ないまま、昭和27年に新たな買収計画を策定・公告し、縦覧に供した。これに対し、旧計画の取消が公告されていないことや、訴訟係属中に職権取消はできないこと等を理由として、新計画の違法性が争われた。
事件番号: 昭和36(オ)947 / 裁判年月日: 昭和38年3月15日 / 結論: 棄却
被買収者が農地所在の村で農地委員の選挙権を行使した等の事実があつても、右買収基準時に教師として他村に転任しその学校住宅に家族とともに居住していたという事実関係のもとにおいては、その住所が当該農地の所在地にあつたと認めなければならないものではない。
あてはめ
処分庁が自ら誤りを認めた以上、訴訟係属中であっても職権取消を妨げる理由はない。本件では、旧買収計画と内容的に抵触する新買収計画が適法に策定・公告され、縦覧に供されている。このように、前の処分と相抵触する後の処分が適法になされた以上、たとえ旧計画の取消自体が公告されていなくとも、新計画の公告・成立によって旧計画は当然に職権消滅(取消)したものと認められる。
結論
処分庁は訴訟係属中も職権取消が可能であり、本件では新計画の樹立によって旧計画は当然に取り消されたといえるため、二重の買収計画が存在するとの違法はない。
実務上の射程
行政庁の自律的な是正権限を認めた重要判例。答案では、事情変更や処分の誤りによる「職権取消」の可否が問われた際、争訟継続中であっても処分庁の判断でなされ得る根拠として用いる。また、明示的な取消処分がなくとも「抵触する後行処分」によって先行処分が失効(黙示の取消)することを論じる際の規範となる。
事件番号: 昭和36(オ)290 / 裁判年月日: 昭和37年2月6日 / 結論: 棄却
誤つて二重に農地買収計画が樹立された場合、いずれか一方が違法であり無効であることは勿論であるが、後の計画が違法であるとは断定できない。
事件番号: 昭和29(オ)890 / 裁判年月日: 昭和31年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法令の拘束に反しない限り、裁量の性質(法規裁量・自由裁量)にかかわらず違法とはならない。また、行政機関内部の通達(選定基準)に反しても、直ちに当該処分が違法となるわけではなく、法令の趣旨に照らして判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人の所有する未墾地について、自作農創設特別措置法3…
事件番号: 昭和32(オ)440 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
未墾地買収においては、買収目的地の実測面積の表示を欠いた買収計画であつても、買収目的地の特定性が動かない限り、違法ではない。