一筆の土地の一部が山林を形成して耕作地との区別が一見して明白な場合、当該農地買収計画が右山林部分を除外した耕作地の反別を表示してなされた以上、買収区域の特定に欠けるところはない。
一筆の土地の一部についてなされた農地買収計画の買収区域の特定が争われた事例
自作農創設特別措置法6条
判旨
一筆の土地の一部を買収対象とする計画であっても、現地の状況に照らして客観的に範囲が特定され、関係者がそれを了知し得るのであれば、買収計画は有効である。
問題の所在(論点)
一筆の土地の一部を対象とする買収計画において、図面による表示がない場合に、買収対象区域の「特定」が認められるための要件が問題となる。
規範
行政処分(買収計画)の対象が「一筆の土地の一部」である場合、当該計画に図面による明確な表示が欠けていたとしても、現地の状況から客観的にその範囲を特定することができ、かつ関係者がその範囲を了知し得る状態にあれば、処分の対象は特定されていると解すべきである。
重要事実
本件買収計画において、農地として一筆の土地の内の一部(三畝、一反一畝、一〇歩等)が買収対象とされた。しかし、計画上は図面等による明確な表示がなされていなかった。対象地の一部は山林であり、計画は山林部分を除外した「現に耕作されている耕作地」の面積を表示していた。上告人は、買収区域が特定されておらず、また一部の土地は農地ではないと主張して計画の違法を争った。
あてはめ
本件において、買収対象とされたのは山林部分を除外した「現に耕作されている土地」である。耕作の有無は現地の状況から一見して明白であり、客観的に買収範囲を画定することが可能である。したがって、図面がなくとも、関係者はどの部分が買収対象であるかを十分に知ることができたといえる。また、原審が証拠に基づき昭和20年当時の現況を農地と認定した点についても不合理な点は認められない。
結論
本件買収計画の対象区域は特定されており、適法である。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の対象特定に関する判断枠組みとして、文面上厳密な特定(図面等)がなくとも、実地状況や客観的事実から関係者が了知可能な程度に特定されていれば足りることを示している。土地の収用や農地買収を巡る処分の効力を争う場面で、手続的瑕疵(特定の不十分さ)を否定する法理として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)1112 / 裁判年月日: 昭和33年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分(農地買収計画および訴願裁決)における目的物の範囲は、手続上客観的に明確であれば足り、実測図面等の添付により区域が特定されている場合には有効に成立する。 第1 事案の概要:農地買収計画の策定に際し、村農地委員会が買収区域を検縄によって実測し、図面を作成した。当該計画の縦覧(公告)に当たって…
事件番号: 昭和30(オ)756 / 裁判年月日: 昭和31年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未墾地買収処分において、買収区域が買収令書によって特定されていない場合は違法であるが、令書の作成過程や標識設置時期に変更等があっても、直ちに区域が不特定であるとは断定できない。 第1 事案の概要:上告人は、国による本件未墾地買収処分について、その買収区域が不特定であるから違法であり、取り消されるべ…
事件番号: 昭和33(オ)1083 / 裁判年月日: 昭和36年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、買収対象が具体的にどの区域であるかが客観的に明らかであり、かつ処分庁および被処分者がそれを容易に推知できる場合には、買収対象の特定に欠けるところはない。 第1 事案の概要:上告人が所有し、訴外人が大正3年頃から昭和21年頃まで小作していた農地(2反7畝28歩のうちの1反7畝…