宅地買収計画を取り消す旨の異議決定が確定すれば、買収の申請は当然に効力を失うものと解すべきであつて、右買収の申請に基づき再度樹立された宅地買収計画は、違法である。
宅地買収計画を取り消す旨の異議決定が確定した場合と当該買収の申請に基づき再度樹立された宅地買収計画の効力
自作農創設特別措置法15条,自作農創設特別措置法7条
判旨
行政庁の異議決定や裁決が確定した場合、特別の規定がない限り、行政庁自身もこれを取り消し又は変更できない拘束を受ける(不可変更力)。当初の買収計画が異議申立てにより取り消された場合、再度の申請等がない限り、同一の客観的事情の下で再度同様の買収計画を樹立することは許されない。
問題の所在(論点)
行政庁による異議決定の確定後に、同一の対象について再度同一の処分を行うことの可否、および異議決定によって当初の申請の効力が失われるか。
規範
行政争訟手続において異議の決定や裁決等が確定した場合には、行政庁は、特別の規定がない限り、自らこれを取り消し又は変更することができない拘束(不可変更力)を受ける。この趣旨は、紛争の終局的解決と法的安定性の確保にあり、決定の基礎となった客観的事情と同一の事情の下で、取り消された処分と同一の内容の処分を繰り返すことは許されない。また、当初の処分が異議決定等により取り消された場合、その処分の前提となった申請も、特段の意思表示を待たず当然にその効力を失う。
重要事実
農地委員会が、上告人ら所有の宅地について自作農創設特別措置法に基づく買収計画を樹立したが、上告人らの異議申立てが認められ、当該買収計画を取り消す決定が確定した。その後、大阪府農地委員会の指示を受け、特段の新たな申請や事情の変更がないにもかかわらず、委員会は同一の宅地について再度買収計画を樹立した。これに対し、上告人らが再度の買収計画の違法を主張して争った事案である。
事件番号: 昭和27(オ)846 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】買収計画が協定を理由として取り消された場合であっても、当該協定の不履行があったときは、再度同一の対象に対して買収計画を立てることは違法ではない。 第1 事案の概要:農地の買収計画に関し、当事者間での協定(合意)が成立したことを理由として、一度は買収計画が取り消された。しかし、その後当該協定が履行さ…
あてはめ
本件では、当初の買収計画が異議決定により取り消され、その決定が確定している。この決定には不可変更力が生じるため、行政庁はこれに拘束される。当初の計画が取り消されたことにより、その前提であった買収申請も当然に効力を失っており、再度の申請もなされていない。また、再度の買収計画の樹立に際し、法律上の根拠となる規定や新たな事実等の事情変更も認められない。したがって、大阪府農地委員会の指示には法的根拠がなく、前提要件たる申請を欠いたままなされた再度の買収計画は、適法な手続を欠くものといえる。
結論
再度の買収計画は、前提要件である申請を欠き、確定した異議決定の拘束力に反する違法なものである。したがって、原判決を破棄し、上告人らの主張を認めて買収計画を違法と判断すべきである。
実務上の射程
行政処分の「不可変更力」を正面から認めた重要判例である。答案上では、裁決や異議決定がなされた後の「再処分」の可否が問われる場面で、法的安定性・紛争の終局的解決という趣旨と共に本規範を提示する。また、前提となる申請が失効するという論理は、手続的瑕疵を導く際の有力な論拠となる。
事件番号: 昭和33(オ)1078 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
宅地買収計画取消請求の訴において、買収対価の不当がその違法事由の一として主張されている場合には、予備的請求としての買収対価増額請求の訴は、出訴期間経過後に提起されたものであつても、出訴期間遵守の点においては欠くるところがないと解すべきである。
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和30(オ)444 / 裁判年月日: 昭和33年2月7日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画に関する異議、訴願を棄却する決定、裁決があつても、村農業委員会は原計画を取り消し得ないものではない。 二 農地買収計画に耕作されていない土地が含まれていても、その面積は数坪の僅少部分であつて、それ自体独立して価値のあるものと認め難いときは、右買収計画は違法といえない。