一 農地買収計画に関する異議、訴願を棄却する決定、裁決があつても、村農業委員会は原計画を取り消し得ないものではない。 二 農地買収計画に耕作されていない土地が含まれていても、その面積は数坪の僅少部分であつて、それ自体独立して価値のあるものと認め難いときは、右買収計画は違法といえない。
一 農地買収計画に関する異議、訴願を棄却する決定、裁決があつた場合における原計画の取消の適否 二 耕作されていない僅少面積の土地を含む農地買収計画の適否
自作農創設特別措置法7条,自作農創設特別措置法6条2項,訴願法16条
判旨
行政庁は、異議申立てや訴願を棄却する決定・裁決があった後であっても、職権で原処分を取り消すことが妨げられない。また、農地買収計画において僅少な道路敷が含まれていても、独立した価値がない等の事情があれば、直ちに計画全体を違法として取り消すべきとはいえない。
問題の所在(論点)
1. 異議・訴願の棄却決定・裁決があった後に、原処分庁が自ら原処分(第一号計画)を取り消すことができるか。2. 既に所有権を失った土地について買収計画の取消しを求める訴えの利益があるか。3. 買収対象に本来の目的外である僅少な道路敷が含まれる場合、計画全体が違法となるか。
規範
1. 行政処分の職権取消:処分を維持する旨の異議決定や裁決があった場合でも、原処分庁は依然としてその処分を職権で取り消す権限を保持する。2. 取消訴訟の原告適格:処分によって侵害されるべき権利(所有権等)が既に消滅している場合、その処分の取消しを求める訴えの利益は認められない。3. 処分の違法性と取消の範囲:買収計画等に本来の目的外の土地が僅かに含まれる場合であっても、それが独立した価値を欠き、処分の全体に重大な影響を及ぼさないときは、直ちに処分全体を違法として取り消すことはできない。
重要事実
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
農地買収計画(第二号買収計画)に関し、上告人(旧地主)がその取消しを求めた事案。上告人は、計画対象に農地以外の山林や既に県道用地として買収済みの道路部分が含まれていること、及び一度異議決定や訴願裁決によって確定した計画(第一号計画)を処分庁が後に取り消したことは違法であること等を主張して争った。なお、問題となった土地の一部は現在、幅約90cm(三尺)、数坪程度の僅少な通路として使用されているに過ぎない状態であった。
あてはめ
1. 異議・訴願を棄却する決定や裁決は、原処分を維持するに過ぎず、原処分庁が自らその誤りを認めて職権で取り消すことを禁止するものではない。したがって第一号計画の取消しは適法である。2. 県道用地として買収済みの道路部分については、上告人に既に所有権がなく、当該部分の計画取消しを求める利益は認められない。3. 計画に含まれた旧街道の敷地は、現在は一軒の宅地に至る通路に過ぎず、幅三尺数坪という極めて僅少な面積であり、独立した価値を認め難い。このような軽微な不備が含まれるからといって、農地買収計画という行政処分全体を直ちに違法として取り消すべき事由には当たらない。
結論
1. 棄却裁決後も原処分庁による職権取消しは可能である。2. 所有権のない土地について訴えの利益は認められない。3. 僅少な目的外土地の混入は、直ちに計画全体の違法事由とはならない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
行政処分の「職権取消し」の限界に関する重要判例。一度確定した処分であっても、相手方に有利な方向での取消し(職権取消し)は、裁決庁の判断を拘束しない限り可能であることを示している。また、軽微な瑕疵(目的外土地の混入)が処分全体の効力に与える影響を限定的に捉える実務上の指針となる。
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
事件番号: 昭和28(オ)241 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: その他
自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号に該当する農地は、他の農地を遡及買収する場合でも在村地主の小作地保有面積の計算上小作地に算入することはできない。
事件番号: 昭和33(オ)39 / 裁判年月日: 昭和35年9月27日 / 結論: その他
一 土地台帳の記載に誤りがあるものとして正規の手続によりそれが訂正された場合には、たとえ、右訂正が農地の買収に関する訴訟の係属後であつても、地主の保有小作地の面積の計算については、訂正後の台帳によるべきである。 二 一筆の農地の地積中畦畔の面積の占める割合が三分の一を越える程度に過大である場合には、地主の保有小作地の面…
事件番号: 昭和29(オ)258 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
遡及買収指示手続に違法があつても、このため、右指示に基き定められた農地買収計画が違法となることはない。