一 土地台帳の記載に誤りがあるものとして正規の手続によりそれが訂正された場合には、たとえ、右訂正が農地の買収に関する訴訟の係属後であつても、地主の保有小作地の面積の計算については、訂正後の台帳によるべきである。 二 一筆の農地の地積中畦畔の面積の占める割合が三分の一を越える程度に過大である場合には、地主の保有小作地の面積の計算については、畦畔の面積はすべて除外すべきものである。
一 土地台帳が訂正された場合、地主の保有小作地の面積の計算については新旧いずれの台帳の記載によるべきか 二 一筆の農地の地積中畦畔の占める割合が過大である場合、地主の保有小作地の面積の計算につき畦畔面積を算入することは許されるのか
自作農創設特別措置法10条,土地台帳法38条,土地台帳法施行細則8条,土地台帳法施行細則12条,土地台帳法施行細則15条
判旨
農地買収令書に一筆の一部を地積のみで表示した場合でも、関係当事者間に疑いがない程度に特定されていれば有効であり、また、土地台帳の訂正により過大な畦畔面積が判明した場合には、これを除外して保有面積を計算すべきである。
問題の所在(論点)
1. 買収令書において一筆の土地の一部を地積のみで表示した場合に、買収目的地の特定として有効か。 2. 土地台帳に記載された農地面積に過大な畦畔が含まれる場合、保有制限面積の計算においてこれを除外すべきか。
規範
1. 買収目的地の特定:買収令書に一筆の土地の一部を単に地積で掲げているに過ぎない場合でも、買収手続当時の事情の下で、右表示が特定の一部を指すものであることが関係当事者間に疑いを容れない程度に看取し得る場合には、目的地の特定を欠くものとはいえない。 2. 農地面積の算定:自作農創設特別措置法10条に基づく農地面積は原則として土地台帳によるが、正規の手続で訂正された場合は訂正後の地積による。また、一筆の農地中に過大な畦畔面積(地積の1/3を超える等)が含まれる場合には、保有小作地の面積計算において、当該畦畔面積をすべて除外して計算するのが相当である。
事件番号: 昭和33(オ)1083 / 裁判年月日: 昭和36年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、買収対象が具体的にどの区域であるかが客観的に明らかであり、かつ処分庁および被処分者がそれを容易に推知できる場合には、買収対象の特定に欠けるところはない。 第1 事案の概要:上告人が所有し、訴外人が大正3年頃から昭和21年頃まで小作していた農地(2反7畝28歩のうちの1反7畝…
重要事実
上告人A1が所有する農地について、自作農創設特別措置法に基づく買収計画が樹立された。本件買収令書には、一筆の土地のうち一部の地積(1反3畝13歩)のみが記載されていたが、当該部分はA1が以前から小作させていた範囲と一致しており、当事者間では特定に疑いがなかった。一方で、別の対象土地については、訴訟中に土地台帳が合筆・訂正され、一筆の土地の過半に近い過大な畦畔(8畝18歩)が含まれていることが判明した。A1はこの畦畔部分を農地面積から除外すべきであり、除外すれば保有制限内にとどまるため買収処分は違法であると主張した。
あてはめ
1. 目的地の特定について:本件では、令書に記載された地積が上告人が現に小作させていた範囲と一致し、他に紛らわしい関係もなかった。この場合、当事者間では買収範囲は事実上確定しており、図面の添付等がなくとも特定に欠けるところはない。 2. 畦畔の除外について:土地台帳法に基づき正規に訂正された地積は、農地面積算定の基準となる。本件の訂正後の台帳によれば、畦畔が占める割合は全体の3分の1を超えており、このような過大な畦畔が含まれる場合には、実質的な農地面積を把握するためこれを除外して計算すべきである。原審がこの点を審理せずに台帳の記載を排斥したのは審理不尽である。
結論
1. 目的地の表示が関係当事者間で疑いなく看取できる程度であれば、買収処分は有効である。 2. 過大な畦畔面積が含まれる場合、これを除外せずに保有面積を算定した処分は違法となり得るため、本件買収処分の一部を破棄し差し戻す。
実務上の射程
行政処分の目的物特定について、書面上の形式的記載だけでなく当時の具体的状況から個別に判断する枠組みを示す。また、公簿(土地台帳)の記載が実態と異なる場合の修正および農地法制における「畦畔」の扱いについて、実質的な農地面積算定の重要性を強調する射程を持つ。
事件番号: 昭和25(オ)419 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の解約について合意がなされた場合であっても、その解約が適法かつ正当であるか否かは、自作農創設特別措置法の趣旨に照らし、小作人と地主の生活状態等を比較衡量して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人とD等との間で農地の解約について合意がなされた事案において、原審はその解約が合意によるものであ…
事件番号: 昭和30(オ)718 / 裁判年月日: 昭和33年3月7日 / 結論: 棄却
一 農地所有者の地位、職業、子の教育関係等を考慮すれば右所有者が村内に住所を有するに至るであろう時期が七年余の将来より更におくれるかも知れない状況にある場合は、その地主は自作農創設特別措置法第四条第三項にいわゆる「当該農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込のあるもの」に該当しない。 二 農地賃貸借について農地…
事件番号: 昭和28(オ)241 / 裁判年月日: 昭和32年2月7日 / 結論: その他
自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号に該当する農地は、他の農地を遡及買収する場合でも在村地主の小作地保有面積の計算上小作地に算入することはできない。
事件番号: 昭和27(オ)1252 / 裁判年月日: 昭和29年11月26日 / 結論: 棄却
宅地の買収計画によつて、現に賃借人等が使用中の宅地について買収計画が定められたことを十分に推知される場合は、計画に図面の添付がなくても、それがため計画そのものは必ずしも違法とすることはできない。