宅地の買収計画によつて、現に賃借人等が使用中の宅地について買収計画が定められたことを十分に推知される場合は、計画に図面の添付がなくても、それがため計画そのものは必ずしも違法とすることはできない。
宅地買収計画によつて買収目的地の範囲を正確に知ることができないとしても計画が違法でないとされた事例
自作農創設特別措置法15条3項,自作農創設特別措置法6条5項
判旨
農地買収計画において、公告に図面が添付されず買収範囲を正確に把握できない場合であっても、賃借権の範囲や現況等から対象地を特定し得る事情があれば、買収計画は違法とはならない。
問題の所在(論点)
農地買収計画の公告において、図面の添付がなく対象地の範囲を正確に知ることができない場合、当該買収計画は特定を欠くものとして違法となるか。
規範
買収計画の適法性は、公告内容により被買収者が自己の所有地のいずれについて計画が立てられたかを知り得る程度に、買収対象地が特定されているか否かによって判断すべきである。図面の添付がなく正確な範囲の把握が困難であっても、賃借関係や土地の現況等の事情から対象地の特定が可能であれば、当該計画は違法ではない。
重要事実
上告人所有の宅地について買収計画が立てられたが、その公告には図面が添付されていなかった。対象地は訴外D及びEがそれぞれ上告人から賃借し、地上に住宅や農業用施設を建設して現に使用中の土地であった。買収計画は、これらD及びEの賃借分として立てられたものであり、地番号は当時未分筆のものが付されていた。
事件番号: 昭和24(オ)129 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が買収計画への異議に対し法定期間内に決定を行わず、事実上計画から除外したとしても、正式な決定がない限り買収しないことが法律上確定したとはいえず、再度同一の買収計画を立てることは直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年3月になされた農地買収計画に対し異議を申し立てた。農…
あてはめ
本件では、買収計画が特定の賃借人(D及びE)の賃借分として立てられたことが計画及び公告から推知できる。また、当該土地は賃借人らが現に住宅等を建設して使用しており、上告人も自己の土地のどの範囲が買収対象となっているかを知ることができた。したがって、図面の欠如や未分筆地の地番号の使用があったとしても、買収対象地は一応特定されていると解される。
結論
本件買収計画を違法とすることはできず、上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の対象の特定に関する判断枠組みを示す。地図や図面の欠如といった形式的不備があっても、処分の文言、関係者の占有状況、権利関係等の外形的客観的事実から対象を合理的に特定できる場合には、処分の効力は妨げられないとする実務上の指針となる。
事件番号: 昭和33(オ)39 / 裁判年月日: 昭和35年9月27日 / 結論: その他
一 土地台帳の記載に誤りがあるものとして正規の手続によりそれが訂正された場合には、たとえ、右訂正が農地の買収に関する訴訟の係属後であつても、地主の保有小作地の面積の計算については、訂正後の台帳によるべきである。 二 一筆の農地の地積中畦畔の面積の占める割合が三分の一を越える程度に過大である場合には、地主の保有小作地の面…
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
事件番号: 昭和29(オ)258 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
遡及買収指示手続に違法があつても、このため、右指示に基き定められた農地買収計画が違法となることはない。