宅地買収計画取消請求の訴において、買収対価の不当がその違法事由の一として主張されている場合には、予備的請求としての買収対価増額請求の訴は、出訴期間経過後に提起されたものであつても、出訴期間遵守の点においては欠くるところがないと解すべきである。
出訴期間経過後の予備的請求の訴が適法とされた事例
行政事件訴訟特例法5条1項,行政事件訴訟特例法5条5項,自作農創設特別措置法15条3項,自作農創設特別措置法14条
判旨
買収計画の取消訴訟において対価の不服を主張していた場合、後になされた対価増額請求の予備的追加は、出訴期間の遵守との関係では当初の訴訟提起時に遡及するが、被告を誤った不適法な訴えとして却下される。
問題の所在(論点)
買収計画の適法性を争う訴訟において「対価の不当性」を取消事由として主張できるか。また、出訴期間経過後になされた対価増額請求の予備的追加について、期間遵守が認められるか、および被告適格の欠如が訴えの適法性にどう影響するか。
規範
1. 買収対価が不当に少額であるとしてその増額を求めるには、個別の対価増額請求訴訟によるべきであり、これをもって買収処分自体の効力(買収計画の適法性)を争うことはできない。2. 出訴期間制限のある訴訟において、当初の取消訴訟で対価への不服が攻撃防御方法として主張されていた場合、後から追加された対価増額請求の予備的申立ては、実質的な争訟の意思表明があるものとして、当初の訴訟提起時に出訴期間を遵守したものと取り扱うのが相当である。3. ただし、予備的請求の被告は、当該請求にかかる法規上の被告適格を有する者でなければならない。
重要事実
上告人らは、自作農創設特別措置法に基づく宅地買収計画に対し、農業委員会を被告として買収計画取消請求(第一次的請求)を提起した。その中で「買収対価が時価に比して不当に少額であり違法である」旨を主張していた。その後、上告人らは原審において、予備的に買収対価増額請求を追加した。しかし、増額請求の被告は法律上「国」とされるところ、上告人らは第一次的請求と同じ「農業委員会」を被告としたまま予備的請求を行った。
事件番号: 昭和33(オ)1095 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】買収計画取消訴訟において対価の不当を主張していた場合、後の対価増額請求の予備的追加における出訴期間の遵守は、取消訴訟の提起時を基準に判断されるが、被告を誤った不適法な訴えは却下を免れない。 第1 事案の概要:上告人は、農業委員会を被告として宅地買収計画の取消訴訟(第一次的請求)を提起し、その中で買…
あてはめ
まず、買収対価の不服は専用の増額請求訴訟(自創法14条)によるべきであり、買収計画自体の取消事由とはならないため、第一次的請求は理由がない。次に、予備的請求の出訴期間について、第一審で対価の不服を実質的に表明していた以上、期間遵守は認められる。しかし、対価増額請求は国を被告とすべき(同法14条2項)であるが、本件予備的請求は農業委員会を相手方として申し立てられており、被告適格を誤っているといえる。
結論
本件買収計画取消請求は失当であり、予備的に追加された買収対価増額請求は、被告適格を誤った不適法な訴えとして却下を免れない。
実務上の射程
行政事件訴訟法における公法上の当事者訴訟(形式的当事者訴訟)と抗告訴訟の準別、および出訴期間の遵守に関する柔軟な解釈の限界(被告適格の厳格性)を理解する上で重要な判例である。特に、対価の不服を理由に処分の効力そのものを争うことはできないという点は、公用収用等の事案において共通する法理である。
事件番号: 昭和28(オ)1347 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】行政処分に対する不服申立期間を徒過してなされた不適法な申立てに対し、却下裁決がなされた場合には、訴願前置主義の下ではもはや原処分の当否を争う取消訴訟を提起することはできない。 第1 事案の概要:本件買収計画が昭和23年9月2日に定められ、同月3日から12日まで縦覧に供された。上告人がこれに対し異議…
事件番号: 昭和33(オ)1094 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条2項1号にいう「主たる所得が農業以外の職業から得られている場合」とは、特定の年においてたまたま他所得が多いことを指すのではなく、継続的にみて常態として他所得が主であると認められる場合を指す。 第1 事案の概要:買収計画の対象となった宅地の申請人DおよびEについて、原審は昭…
事件番号: 昭和33(オ)1077 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: その他
宅地の附帯買収申請者の主たる所得が農業以外の職業から得られている場合であるかどうかの判断にあたり、継続的にみて常態として主たる所得が農業から得られていると認めらるべき証拠があるにかかわらず、これをは排斥しうべき特段の事情を説示することなく、買収計画樹立前の或特定年度の所得の状況のみに基づき、主たる所得が農業以外の職業か…
事件番号: 昭和40(行ツ)103 / 裁判年月日: 昭和42年9月26日 / 結論: 破棄自判
宅地買収計画を取り消す旨の異議決定が確定すれば、買収の申請は当然に効力を失うものと解すべきであつて、右買収の申請に基づき再度樹立された宅地買収計画は、違法である。