判旨
買収計画取消訴訟において対価の不当を主張していた場合、後の対価増額請求の予備的追加における出訴期間の遵守は、取消訴訟の提起時を基準に判断されるが、被告を誤った不適法な訴えは却下を免れない。
問題の所在(論点)
1. 取消訴訟で対価の不当を主張していた場合、後になされた対価増額請求の予備的追加について出訴期間の遵守を認めることができるか。2. 買収対価の不当を理由に買収計画自体の取消を求めることができるか。3. 対価増額請求において被告適格を誤った場合の訴えの適否。
規範
1. 予備的請求は本来追加申立時に提起されたものとなるが、取消訴訟において既に対価の不服が請求原因として主張されている場合、実質的に対価を争う意思が表明されているといえるため、出訴期間の遵守については取消訴訟の提起時を基準とするのが相当である。2. 自作農創設特別措置法14条に基づく対価増額請求の訴えは、国を被告としなければならない。3. 買収対価の不当を理由に買収処分自体の効力を争うことは許されず、対価増額の訴えによるべきである。
重要事実
上告人は、農業委員会を被告として宅地買収計画の取消訴訟(第一次的請求)を提起し、その中で買収対価が時価に比して著しく低額で不当であると主張していた。その後、控訴審において対価増額請求を予備的に追加したが、この追加は法定の出訴期間(1か月)を経過した後であり、かつ被告を国のままにせず、農業委員会を相手方とする予備的請求としてなされた。
あてはめ
1. 出訴期間について、上告人は第一審から取消訴訟の理由として対価の不当を主張しており、国に対し対価を争う意思が実質的に表明されていたといえる。よって、出訴期間の関係では取消訴訟提起時に遡及して取り扱うべきであり、期間経過を理由に却下した原審の判断は違法である。2. しかし、本件予備的請求は農業委員会を相手方としており、法が定める「国を被告とする」という被告適格の要件を欠いている。3. また、対価の不当は買収計画取消の事由にはならないため、第一次的請求も認められない。
結論
本件予備的請求は、出訴期間の遵守は認められるものの、被告適格を誤った不適法な訴えであり却下されるべきである。また、対価の不当を理由とする取消請求は認められない。上告棄却。
事件番号: 昭和33(オ)1078 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
宅地買収計画取消請求の訴において、買収対価の不当がその違法事由の一として主張されている場合には、予備的請求としての買収対価増額請求の訴は、出訴期間経過後に提起されたものであつても、出訴期間遵守の点においては欠くるところがないと解すべきである。
実務上の射程
行政事件訴訟における「訴えの変更」や「予備的併合」の場面において、出訴期間の遵守を実質的に判断して救済を認める法理として活用できる。ただし、形式的な被告適格の欠如までは救済されない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和28(オ)1347 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】行政処分に対する不服申立期間を徒過してなされた不適法な申立てに対し、却下裁決がなされた場合には、訴願前置主義の下ではもはや原処分の当否を争う取消訴訟を提起することはできない。 第1 事案の概要:本件買収計画が昭和23年9月2日に定められ、同月3日から12日まで縦覧に供された。上告人がこれに対し異議…
事件番号: 昭和33(オ)1094 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法15条2項1号にいう「主たる所得が農業以外の職業から得られている場合」とは、特定の年においてたまたま他所得が多いことを指すのではなく、継続的にみて常態として他所得が主であると認められる場合を指す。 第1 事案の概要:買収計画の対象となった宅地の申請人DおよびEについて、原審は昭…
事件番号: 昭和40(行ツ)103 / 裁判年月日: 昭和42年9月26日 / 結論: 破棄自判
宅地買収計画を取り消す旨の異議決定が確定すれば、買収の申請は当然に効力を失うものと解すべきであつて、右買収の申請に基づき再度樹立された宅地買収計画は、違法である。