判旨
行政処分の取消しを求める訴えが、出訴期間を経過した後に提起された不適法なものである場合、当該処分に無効原因があるとの主張が含まれていても、裁判所は処分の当否について実体的な判断を加える必要はない。
問題の所在(論点)
取消訴訟としての出訴期間を経過した後に、行政処分の無効を理由に取消しを求める旨の主張がなされた場合、裁判所は実体的な無効判断を行う義務を負うか。
規範
行政処分の取消しを求める訴えについては、法律の定める出訴期間の制限が適用される。出訴期間経過後に提起された訴えは不適法であり、原告が当該処分の無効を予備的に主張している等の事情がない限り、裁判所は本案について判断することなく却下すべきである。
重要事実
上告人所有の農地に対し、農地委員会および県知事が農地買収計画および買収処分を行った。上告人は、当該農地が買収対象外であるとして処分の取消しを求めたが、提訴は当時の法律(昭和22年法律第241号附則7条)が定める出訴期間を過ぎていた。上告人は、準備書面において「行政処分の無効を原因として取消しを求める」旨を主張し、出訴期間の制限を受けない旨を争った。
あてはめ
本件訴訟は、上告人の主張および弁論の全趣旨に照らせば、買収計画等の取消しを求める訴えであることは明らかである。行政処分の取消しを求める訴えが法定の出訴期間を経過した後に提起された場合、その訴えは形式的に不適法となる。たとえ上告人が処分の無効を主張したとしても、訴訟の性質が取消訴訟である以上、期間制限の適用は免れない。不適法な訴えにおいては、処分の実体的な違法性や無効原因の存否について審理・判断を加える必要はなく、門前払いとして却下するのが相当である。
結論
本件訴えは出訴期間経過後の不適法なものとして却下されるべきであり、無効原因の有無について判断しなかった原審の判断は正当である。
実務上の射程
取消訴訟における出訴期間の遵守という形式的要件の厳格性を示す。処分の無効を争う場合は、取消訴訟の形式ではなく「無効確認の訴え」として構成しなければ期間制限の潜脱を許すことになるため、実務上は訴訟物の峻別が必要となる。
事件番号: 昭和25(オ)287 / 裁判年月日: 昭和26年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に対する取消訴訟において、出訴期間の規定は公法上の法律関係を早期に確定させるための強行規定であり、処分の実体的な違法性の有無や行政庁による訴訟提起の要請にかかわらず適用される。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分について、病者が不在地主にならない保障に反す…
事件番号: 昭和25(オ)73 / 裁判年月日: 昭和25年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴願期間の経過に関し、旧訴願法8条3項にいう「宥恕スベキ事由」の有無の判断は、行政庁の自由裁量に属するものではなく、裁判所が審理判断し得る事項である。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収計画に対して異議および訴願を経た後に出訴したが、原審はその訴願が期間経過後になされた不適法なものであると判断し…
事件番号: 昭和24(オ)14 / 裁判年月日: 昭和24年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消訴訟における出訴期間の起算点に関し、処分の有効・無効は原則として影響せず、処分があったことを知った日から期間が進行する。また、たとえ処分自体に違法の疑いがあっても、法定の不服申立期間を経過した後の提訴は不適法である。 第1 事案の概要:上告人らは、自作農創設特別措置法に基づく被上告委…
事件番号: 昭和25(オ)220 / 裁判年月日: 昭和27年1月25日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法附則第二項によつて買収計画が定められ、その後右附則第二項が削除され、同法第六条の二ないし五が加えられた場合において、裁判所が買収計画の当否を判断するについては、附則第二項によらなければならない。