自作農創設特別措置法附則第二項によつて買収計画が定められ、その後右附則第二項が削除され、同法第六条の二ないし五が加えられた場合において、裁判所が買収計画の当否を判断するについては、附則第二項によらなければならない。
農地買収計画が自作農創設特別措置法附則第二項によつて定められ、その後同項が削除され、同法第六条の二ないし五が加えられた場合に右買収計画の当否を判断するについて基準とすべき法律
自作農創設特別措置法(昭和22年12月26日法律241号による改正前のもの)附則2項,昭和22年法律241号附則2条
判旨
行政処分の取消訴訟における適法性の判断基準時は処分時であり、処分後の法令改正を遡及させて適法性を判断することはできない。また、在村地主の保有面積を超える買収計画の是非において、具体的な除外範囲の特定は行政庁の裁量権に属し、裁判所が自ら特定すべきではない。
問題の所在(論点)
1. 行政処分の取消訴訟において、処分の適法性を判断するための基準時期はいつか(処分後の法令改正を考慮すべきか)。 2. 裁量的な行政処分の一部を取り消す際、裁判所は処分の内容を具体的に特定(代行)すべきか。
規範
1. 行政処分の取消訴訟において裁判所が判断すべきは、当該処分が「その当時の法令」に照らして違法に行われたか否かである。処分後に法律が改正されたとしても、改正後の法律を適用して処分の当否を判断することはできない。 2. 行政庁に裁量が認められる処分(農地買収計画における買収範囲の決定等)の取消訴訟において、裁判所は行政庁の判断を是認した裁決等の違法性を判断すべきであり、行政庁の権限に属する具体的な内容(どの部分を除外するか等)を自ら特定すべきではない。
重要事実
農地委員会が自作農創設特別措置法に基づき、在村地主である被上告人の小作地について買収計画を定めた。被上告人はこれに対し、保有面積が認められていない点などを不服として訴願を提起したが、上告人(行政庁)はこれを是認する裁決を行った。原審がこの裁決を取り消したため、上告人は「原判決は買収計画のどの部分を取り消したのか特定しておらず不明確である」「処分後に削除された旧法(附則2項)を適用して判断したのは違法である」などと主張して上告した。
事件番号: 昭和25(オ)221 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: その他
昭和二二年法律第二四一号による自作農創設特別措置法改正後の同法第六条の二第二項各号に該当する場合は、右改正前の同法附則第二項による農地買収計画も違法である。
あてはめ
1. 本件買収計画は旧法附則2項に基づいて定められたものである。処分後に法改正があったとしても、行政庁は改正後の法律によって処分を行ったのではないから、裁判所が改正後の法律で処分の当否を判断することはできない。改正法における経過措置(手続の効力の読替え)も、違法な計画を適法化する趣旨ではない。 2. 小作地のどの部分を保有させるかは、農地委員会が法の趣旨に従い裁量で定めるべき事柄である。原判決が取消範囲を特定しなかったのは、行政庁にその特定を委ねる趣旨であり、司法権の限界に照らし適当である。
結論
行政処分の適法性は「処分時」の法令により判断されるべきであり、本件買収計画を旧法に基づき「不相当」として取り消した原判決は正当である。上告棄却。
実務上の射程
「処分時説」を明示した重要判例として、取消訴訟の判決時までに法令が変更された場合、あるいは事実関係が変化した場合の論述で用いる。裁判所の判断対象はあくまで「処分当時の違法性」に限定されることを端的に示す際に有用である。
事件番号: 昭和26(オ)7 / 裁判年月日: 昭和27年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未墾地買収において、複数の開拓適地が存在する場合の選択は農地委員会の裁量に属し、裁判所の審査は買収対象が法定要件を充足しているか否か、及び手続の適法性に限られる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、農地委員会が上告人所有の山林を未墾地として買収する処分を行った。これに対し上告人が、①…
事件番号: 昭和25(オ)10 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消しを求める訴えが、出訴期間を経過した後に提起された不適法なものである場合、当該処分に無効原因があるとの主張が含まれていても、裁判所は処分の当否について実体的な判断を加える必要はない。 第1 事案の概要:上告人所有の農地に対し、農地委員会および県知事が農地買収計画および買収処分を行った…
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…