農地買収計画の樹立庁が、買収手続の進行状況その他事務の都合から、一たん買収計画中に定めた買収の時期のみを変更することは、許されないものではない。
農地買収計画中買収の時期のみを変更することの許否。
自作農創設特別措置法6条
判旨
農地買収計画における買収期日の変更は、計画の同一性を失わせるものではなく、変更部分について法定の公告縦覧手続を経れば適法に行うことができる。また、訴願の裁決内容に判断の過誤や不備があったとしても、裁決自体が存在する以上、その後の買収処分の手続上の瑕疵とはならない。
問題の所在(論点)
農地買収計画における買収期日の変更が、計画の同一性を失わせる根本的な変更に当たるか。また、先行する訴願裁決の判断の不備が、後続する買収処分の瑕疵(手続違法)を構成するか。
規範
行政計画における一部事項(買収期日等)の変更は、それが計画の基本に変動を来さず、計画の同一性を維持する範囲内であれば、変更部分について法定の手続(公告・縦覧等)を履践することで足りる。また、行政上の不服申立に対する裁決に判断の不備があっても、裁決という手続自体が完了している以上、特段の事情がない限り、後続する処分の手続的違法事由にはならない。
重要事実
自作農創設特別措置法に基づき、D所有の農地について買収計画が立てられたが、当局は事務の都合等から買収期日のみを変更した。当局は変更に際し、変更点を含む計画全体について改めて公告・縦覧の手続を行った。Dの承継人である上告人らは、期日変更には従前の計画の取消と新規計画の樹立が必要であり、期日変更のみを通知する手続は無効であると主張。また、先行する訴願裁決に判断の不備があるため、本件買収処分も違法であると訴えた。
あてはめ
買収期日は権利変動時期を予告し不測の不利益を防止する趣旨にすぎず、その変更は特定農地の買収という計画の基本を揺るがすものではない。したがって、計画の同一性は維持されており、変更部分について公告・縦覧手続がなされた以上、手続に欠缺はない。また、本件では実質的にも計画全体について再度公告・縦覧がなされており、新規計画樹立としての要件も満たしている。裁決の不備についても、裁決庁が不服に対する処置を了した以上、内容の過誤はあっても裁決を欠く場合とは同視できず、処分を違法ならしめるものではない。
結論
本件買収期日の変更は適法であり、訴願裁決の不備も買収処分の効力に影響しない。したがって、本件買収処分は有効である。
実務上の射程
行政処分の先行段階(計画策定や不服申立)に瑕疵がある場合でも、それが処分の本質的要素や手続の存否に関わらない軽微なもの、あるいは形式的に手続が完了している場合には、後続処分の違法事由とならないことを示す。計画の同一性判断や裁決の瑕疵の程度を論じる際の基準となる。
事件番号: 昭和28(オ)484 / 裁判年月日: 昭和32年6月13日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政庁が不変期間の徒過を宥恕して受理した訴願裁決は、行政事件訴訟特例法上の「訴願の裁決」に該当し、当該訴願人の承継人は自ら訴願を経ることなく訴訟を提起できる。 第1 事案の概要:農地買収計画に対し、F社及びGが法定期限を約5ヶ月経過した後に県農地委員会へ訴願を提起した。県農地委員会は、期限徒過に宥…
事件番号: 昭和32(オ)116 / 裁判年月日: 昭和33年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に瑕疵がある場合でも、その後に正当な手続を経て瑕疵が補完され、処分時において適法な状態が確保されているならば、当該処分は有効なものとして存続し得る。 第1 事案の概要:農地委員会が土地の買収計画を定め、異議申立を却下した後、上告人は県農地委員会へ訴願を提起した。県農地委員会は法定期間経過後…