公有水面埋立法42条1項に基づく埋立ての承認は,国の機関が行政不服審査法7条2項にいう「固有の資格」において相手方となるものということはできない。
公有水面埋立法42条1項に基づく埋立ての承認と行政不服審査法7条2項にいう「固有の資格」
地方自治法245条3号,地方自治法251条の5第1項,行政不服審査法7条2項,公有水面埋立法42条1項
判旨
行政不服審査法7条2項の「固有の資格」とは、国の機関等が一般私人の立ち得ない特有の立場で処分の相手方となる場合を指す。公有水面の埋立承認は、処分要件等の規律が一般私人の受ける埋立免許と実質的に異ならないため、国の機関が「固有の資格」で受ける処分には当たらず、その取消しに対する裁決は地方自治法上の訴えの対象となる「国の関与」から除外される。
問題の所在(論点)
国の機関に対する処分が「固有の資格」においてなされたもの(行政不服審査法7条2項)といえるか否かの判断基準、および公有水面埋立承認の取消しがこれに該当するか(地方自治法251条の5第1項の訴えの対象となるか)。
規範
行政不服審査法7条2項にいう国の機関等が「固有の資格」において処分の相手方となる場合とは、一般私人が立ち得ない特有の立場にあることをいう。その判断に当たっては、不服申立ての審査対象となる当該処分の規律に着目すべきであり、①当該事務・事業の実施主体が国の機関等に限定されているか、②地位の取得につき国の機関等が一般私人に優先する等の特別の扱いがあるか等を考慮する。国の機関等と一般私人のいずれも処分を得て初めて当該事業を適法に実施でき、かつ処分要件等の規律が実質的に異ならない場合には、名称や事後の監督規定に差異があっても「固有の資格」には当たらない。
重要事実
沖縄防衛局は普天間飛行場代替施設建設のため、沖縄県知事から公有水面埋立承認を得ていたが、後に県知事から当該承認を取り消された。これを不服として防衛局が国土交通大臣に審査請求を行い、大臣は取消処分を取り消す裁決をした。沖縄県は、本件裁決が地方自治法251条の5第1項に基づき取り消されるべき違法な「国の関与」に当たると主張し、出訴した。争点は、本件裁決が同法245条3号の「裁決等」として「国の関与」から除外されるか、その前提として防衛局が「固有の資格」で処分を受けたといえるかであった。
事件番号: 令和3(行ヒ)76 / 裁判年月日: 令和3年7月6日 / 結論: 棄却
1 沖縄県漁業調整規則(昭和47年沖縄県規則第143号。令和2年沖縄県規則第53号による改正前のもの)41条1項に基づく水産動植物の採捕に係る許可に関する県知事の判断は,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められる場合には,地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるものに該当する。 2…
あてはめ
公有水面埋立法は実施主体を限定せず、国による「承認」と一般人による「免許」のいずれも、知事の処分を経て初めて適法な実施権限を得る点で共通する。承認の手続・要件は免許の規定を準用しており、審査基準に実質的差異はなく、国を優先する仕組みも存在しない。完了後の通知手続や監督規定に一部差異があるが、これらは不服申立ての直接の審査対象ではない。したがって、埋立承認を受ける立場は一般私人と実質的に異ならず、沖縄防衛局が一般私人の立ち得ない特有の立場(固有の資格)で処分を受けたとはいえない。
結論
本件埋立承認取消しは「固有の資格」に基づく処分ではないため、これに対する本件裁決は行政不服審査法に基づく適法な裁決であり、地方自治法上の「国の関与」から除外される。したがって、本件訴えは不適法である。
実務上の射程
国や地方公共団体が行政不服審査法を利用できるか否かの境界線を示す。事業法上の処分において、国等と私人が同等の要件・手続で規律されている場合は、国等であっても「一般私人と同じ立場」とみなされ、行政不服審査法の適用(および地方自治法上の関与からの除外)が肯定される。答案上は、行審法の適用除外規定を検討する際のリーディングケースとして活用する。
事件番号: 令和5(行ヒ)143 / 裁判年月日: 令和5年9月4日 / 結論: 棄却
法定受託事務に係る申請を棄却した都道府県知事の処分がその根拠となる法令の規定に違反するとして、これを取り消す裁決がされた場合において、都道府県知事が上記処分と同一の理由に基づいて上記申請を認容する処分をしないことは、地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるものに該当する。
事件番号: 令和4(行ヒ)92 / 裁判年月日: 令和4年12月8日 / 結論: 棄却
地方自治法255条の2第1項1号の規定による審査請求に対する裁決について、原処分をした執行機関の所属する行政主体である都道府県は、取消訴訟を提起する適格を有しない。
事件番号: 平成28(行ヒ)394 / 裁判年月日: 平成28年12月20日 / 結論: 棄却
1 公有水面の埋立てが公有水面埋立法4条1項1号の要件に適合するとした県知事の判断には,当該埋立てがアメリカ合衆国軍隊の使用する飛行場の代替施設を設置するために実施されるものであって,県知事が,当該代替施設の面積や埋立面積が当該飛行場の施設面積と比較して相当程度縮小されることに加え,滑走路延長線上を海域とすることにより…
事件番号: 昭和27(オ)855 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第五号により「近く土地使用の目的を変更することを相当とする農地」として指定されていない農地であつても、右の場合に該当するときは、これを買収することは違法である。