音楽教室の運営者と演奏技術等の教授に関する契約を締結した者(生徒)が、上記契約に基づき、上記運営者に対して受講料を支払い、演奏技術等の教授のためのレッスンにおいて教師の指示・指導の下で著作権等管理事業者の管理に係る音楽著作物を含む課題曲を演奏する場合に、次の(1)~(3)など判示の事情の下では、上記レッスンにおける生徒の演奏に関し、上記運営者が上記音楽著作物の利用主体であるということはできない。 (1) 生徒の演奏は、教師から演奏技術等の教授を受けてこれを習得し、その向上を図ることを目的として行われるのであって、上記課題曲を演奏するのは、そのための手段にすぎない。 (2) 生徒の演奏は、教師の行為を要することなく生徒の行為のみにより成り立つものであり、教師による伴奏や各種録音物の再生が行われたとしても、これらは、生徒の演奏を補助するものにとどまる。 (3) 教師による課題曲の選定や生徒の演奏についての指示・指導は、生徒が上記(1)の目的を達成することができるように助力するものにすぎない。
音楽教室の運営者と演奏技術等の教授に関する契約を締結した者(生徒)のレッスンにおける演奏に関し上記運営者が音楽著作物の利用主体であるということはできないとされた事例
著作権法22条
判旨
音楽教室のレッスンにおける生徒の演奏について、音楽教室の経営者は、演奏の目的や態様、関与の内容等を総合考慮すると、著作権法上の利用主体には当たらない。
問題の所在(論点)
音楽教室のレッスンにおける「生徒」の演奏について、教室の経営者(事業者)が著作権法上の「利用主体」といえるか(演奏権侵害の成否)。
規範
演奏の形態による音楽著作物の利用主体の判断に当たっては、演奏の目的及び態様、演奏への関与の内容及び程度等の諸般の事情を考慮して判断すべきである。
重要事実
事件番号: 昭和59(オ)1204 / 裁判年月日: 昭和63年3月15日 / 結論: その他
スナック等の経営者が、カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲の録音されたカラオケテープとを備え置き、客に歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による伴奏により他の客の面前で歌唱させるなどし、もつて店の雰囲気作りをし、客の来集を図つて利益をあげることを意図しているときは、右経営者は、当該音楽著作物の著作権者の許諾を…
著作権管理事業者である上告人が、音楽教室を運営する被上告人らに対し、生徒による課題曲の演奏について演奏権侵害を主張した。生徒は受講料を支払い、教師の指示・指導の下で演奏技術の習得を目的に演奏を行っていたが、演奏自体は任意かつ自主的なものであった。
あてはめ
生徒の演奏目的は技術習得であり、演奏は生徒自身の行為で完結する。教師の指示や選曲は助力にすぎず、生徒に強制はない。また受講料は教授の対価であり演奏自体の対価とはいえない。これらを総合すると、生徒の演奏に関し事業者が管理・支配し利益を享受しているとはいえず、利用主体とは認められない。
結論
音楽教室の経営者は、生徒の演奏に関しては著作権法上の利用主体に当たらないため、演奏権侵害に基づく損害賠償請求権等は発生しない。
実務上の射程
いわゆる「クラブ・キャッツアイ事件」以来の規範を維持しつつ、物理的な演奏行為者ではない事業者が利用主体となるための要件(管理性と利益性)の具体化を示した。特に、教育現場における生徒の自立的な活動については、事業者の支配が及びにくいとする判断指針として重要である。
事件番号: 平成12(受)222 / 裁判年月日: 平成13年3月2日 / 結論: その他
カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者と…
事件番号: 昭和50(オ)324 / 裁判年月日: 昭和53年9月7日 / 結論: 棄却
既存の著作物に接する機会がなかつたためその存在、内容を知らないでこれと同一性のある作品を作成した者は、右著作物の存在、内容を知らなかつたことにつき過失があると否とにかかわらず、著作権侵害の責任を負わない。
事件番号: 平成21(受)788 / 裁判年月日: 平成23年1月20日 / 結論: 破棄差戻
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて,当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,当該サービス…
事件番号: 平成21(行ヒ)226 / 裁判年月日: 平成23年4月12日 / 結論: 破棄差戻
年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で期間を1年とする出演基本契約を締結した上,各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員は,次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では,上記法人との関係において労働組合法上の労働者に当たる。 (1) 出演基本契約は,上記法人が,試聴会の審査の結果…