カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負う。
専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるカラオケ装置につきリース業者がリース契約を締結して引き渡す場合の注意義務
著作権法22条,著作権法22条の2,著作権法第7章権利侵害,民法709条,民法719条
判旨
カラオケ装置のリース業者は、当該装置が音楽著作物の上演・演奏に供されるものであるときは、リース契約の相手方が著作権者と使用許諾契約を締結したこと等を確認した上で装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負う。この義務を怠り漫然と引き渡した場合には、不法行為責任(共同不法行為)を免れない。
問題の所在(論点)
カラオケ装置のリース業者が、借主に対し著作権者との使用許諾契約を締結すべき旨を告知・指導するにとどまらず、その締結の事実を確認した上で装置を引き渡すべき注意義務(民法709条、719条)を負うか。
規範
カラオケ装置が専ら音楽著作物の上演・演奏に使用されるものである場合、リース業者は、相手方に対し著作権者との使用許諾契約締結を告知するだけでなく、締結又は申込みの事実を確認した上で装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負う。この義務の根拠は、①著作権侵害の蓋然性が高い装置であること、②侵害が犯罪を構成すること、③業者はリースにより利益を得ていること、④未締結のまま利用される可能性の予見が可能であること、⑤締結確認が容易かつ回避可能であることにある。
重要事実
事件番号: 昭和59(オ)1204 / 裁判年月日: 昭和63年3月15日 / 結論: その他
スナック等の経営者が、カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲の録音されたカラオケテープとを備え置き、客に歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による伴奏により他の客の面前で歌唱させるなどし、もつて店の雰囲気作りをし、客の来集を図つて利益をあげることを意図しているときは、右経営者は、当該音楽著作物の著作権者の許諾を…
業務用カラオケ装置のリース業者である被上告人は、飲食店経営者Dとの間でリース契約を締結した。契約書には、借主の責任でJASRAC(上告人)と使用許諾契約を締結すべき旨の記載があり、口頭でも説明したが、被上告人はDが実際に契約を締結したかを確認せずに装置を引き渡した。その後、Dは無許諾でカラオケを営業に使用し、著作権(演奏権・上映権)を侵害した。
あてはめ
Dによるカラオケ装置の使用は、店の雰囲気作りや集客による利益を目的としており、無許諾であれば著作権侵害となる。被上告人が提供した装置は、性質上著作権侵害を生じさせる蓋然性が高く、また経営者が契約を締結しない率が低くないことは公知であるから、被上告人は契約締結が確認できない限り侵害を予見すべきであった。被上告人は契約の要否を告知したに過ぎず、容易に可能であった締結確認の措置を講じないまま漫然と装置を引き渡した点において、条理上の注意義務に違反したといえる。したがって、当該懈怠とDの侵害行為による損害との間には相当因果関係が認められる。
結論
被上告人は、Dによる著作権侵害について、条理上の注意義務違反に基づき、不法行為による損害賠償責任を負う。
実務上の射程
物理的装置やインフラを提供する者が、利用者の違法行為を予見・回避できる立場にある場合の「条理上の注意義務」を認めた重要な判例。カラオケ法理を「道具の提供者」の過失責任として構成する際の指針となる。
事件番号: 平成21(受)788 / 裁判年月日: 平成23年1月20日 / 結論: 破棄差戻
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて,当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,当該サービス…
事件番号: 平成21(受)653 / 裁判年月日: 平成23年1月18日 / 結論: 破棄差戻
1 公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たる。 2 公衆…
事件番号: 平成22(受)1884 / 裁判年月日: 平成24年1月17日 / 結論: 破棄差戻
旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)の下において映画製作会社の名義で興行された独創性を有する映画の著作物につき,監督を担当した者が著作者の一人であり,著作者の死亡の時点を基準に著作権の存続期間を定める同法3条が適用される結果著作権が存続している場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,著…
事件番号: 平成13(受)952等 / 裁判年月日: 平成14年4月25日 / 結論: 棄却
家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は,いったん適法に譲渡された複製物について消尽し,その効力は,当該複製物を公衆に提示することを目的としないで再譲渡する行為には及ばない。