家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は,いったん適法に譲渡された複製物について消尽し,その効力は,当該複製物を公衆に提示することを目的としないで再譲渡する行為には及ばない。
家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物を公衆に譲渡する権利と複製物の再譲渡
著作権法2条1項19号,著作権法2条3項,著作権法10条1項7号,著作権法26条,著作権法112条
判旨
家庭用テレビゲーム機用ソフトは、著作権法2条3項の「映画の著作物」に当たるが、一旦適法に譲渡された後は、当該複製物に係る頒布権のうち譲渡する権利は消尽し、再譲渡行為に著作権の効力は及ばない。
問題の所在(論点)
家庭用テレビゲームソフトが「映画の著作物」(著作権法10条1項7号、2条3項)に該当するか、および、映画の著作物に認められる「頒布権」(26条1項)は、複製物の第一譲渡によって消尽するか(中古販売を規制できるか)。
規範
特許権の消尽理論は、著作物の譲渡にも原則として妥当する。すなわち、(1)社会公共の利益との調和、(2)市場における商品の自由な流通の確保、(3)著作権者は譲渡代金等により代償を得る機会が保障されており、二重の利得を認める必要性がないこと、を根拠とする。映画の著作物についても、公衆への提示を目的としない家庭用ゲームソフト等の複製物の譲渡については、一度適法に譲渡されたことにより、頒布権のうち「譲渡する権利」はその目的を達成して消尽する。
重要事実
上告人らは、ストーリー展開やCG動画を多用した家庭用テレビゲームソフトの著作権者である。被上告人らは、適法に販売され需要者が購入した中古の当該ソフトを買い取り、店舗で再販売(中古販売)を行っていた。上告人らは、本件ソフトは「映画の著作物」であり、著作権法26条1項の頒布権を専有しているから、無断での中古販売は頒布権侵害にあたると主張して、販売の差止め等を求めた。
あてはめ
本件各ソフトは、プログラムに基づき影像が連続的に表示され、CGや効果音により臨場感を高める創作的表現がなされており「映画の著作物」に当たる。しかし、本件は劇場用映画のような配給制度(貸与による資金回収)を前提とせず、一般商品と同様に市場流通する家庭用ソフトである。著作権者は初回の譲渡により代償を得る機会を保障されており、流通の円滑化という公共の利益を重視すべきである。したがって、適法な販売により譲渡権は消尽しており、被上告人らの中古販売は頒布権を侵害しない。
結論
本件ゲームソフトの頒布権(譲渡する権利)は消尽しており、被上告人らによる中古品の再譲渡に著作権の効力は及ばないため、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
映画の著作物一般について頒布権の消尽を認めたものではなく、あくまで「公衆に提示することを目的としない」複製物(家庭用ソフト等)に限定される。劇場用映画のように配給制度が維持されている実態がある場合には、依然として消尽が否定される余地がある点に注意が必要である。
事件番号: 平成12(受)222 / 裁判年月日: 平成13年3月2日 / 結論: その他
カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者と…
事件番号: 平成19(受)1105 / 裁判年月日: 平成19年12月18日 / 結論: 棄却
昭和28年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物は,平成16年1月1日から施行された著作権法の一部を改正する法律(平成15年法律第85号)による保護期間の延長措置の対象となる同法附則2条所定の「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」に当たらず,その著作権は平成15…
事件番号: 平成21(受)788 / 裁判年月日: 平成23年1月20日 / 結論: 破棄差戻
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて,当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,当該サービス…
事件番号: 平成22(受)1884 / 裁判年月日: 平成24年1月17日 / 結論: 破棄差戻
旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)の下において映画製作会社の名義で興行された独創性を有する映画の著作物につき,監督を担当した者が著作者の一人であり,著作者の死亡の時点を基準に著作権の存続期間を定める同法3条が適用される結果著作権が存続している場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,著…