旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)の下において映画製作会社の名義で興行された独創性を有する映画の著作物につき,監督を担当した者が著作者の一人であり,著作者の死亡の時点を基準に著作権の存続期間を定める同法3条が適用される結果著作権が存続している場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,著作権者の許諾を得ずに,海外において製造した同著作物の複製物を輸入し,国内で頒布する行為をした者が上記映画の興行の時点から所定の期間が経過して著作権の存続期間が満了したと誤信していたとしても,上記の行為について,同人に少なくとも過失がある。 (1) 上記映画の監督を担当した者が同映画の全体的形成に創作的に寄与したことを疑わせる事情はなく,かえって,同人が同映画の冒頭部分等において監督として表示されていた。 (2) 旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)の下において団体名義で興行された独創性を有する映画の著作物については,一律に,又は団体の著作名義をもって興行された著作物若しくはいわゆる職務著作による著作物として当然に,同法6条が適用され,興行の時点を基準に著作権の存続期間が定まるとの解釈を示す公的見解,有力な学説,裁判例があったことはうかがわれない。
旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)の下において興行された独創性を有する映画の著作物の複製物を輸入し,頒布する行為をした者がその著作権の存続期間が満了したと誤信していたとしても,同行為について同人に少なくとも過失があるとされた事例
民法709条,旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)3条,旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)6条
判旨
旧著作権法下の映画の著作権につき、監督が著作者の一人として認められ、かつ、存続期間に関する独自の法的解釈や職務著作の主張に相当な根拠がない場合には、存続期間の満了を誤信したとしても過失が認められる。
問題の所在(論点)
旧著作権法下の映画につき、存続期間に関する法的解釈を誤り、既に期間が満了したものと誤信して複製・輸入等を行った者に、民法709条の過失が認められるか。
規範
旧著作権法下の映画の著作者は、映画の全体的形成に創作的に寄与した者を基準に判断される。また、旧法3条が自然人の死亡時を基準に存続期間を定める以上、一律に旧法6条(団体名義の存続期間)が適用されるとは解されず、特段の根拠なく職務著作に当たると判断することも認められない。したがって、監督等の著作者の死亡時期を調査することで存続期間を認識し得た場合には、満了を誤信したとしても過失が認められる。
事件番号: 平成19(受)1105 / 裁判年月日: 平成19年12月18日 / 結論: 棄却
昭和28年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物は,平成16年1月1日から施行された著作権法の一部を改正する法律(平成15年法律第85号)による保護期間の延長措置の対象となる同法附則2条所定の「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」に当たらず,その著作権は平成15…
重要事実
被告(被上告人)は、昭和20年代に公開された本件各映画のDVDを海外で製造し、輸入・頒布した。被告は、旧法下の映画の著作権は一律に旧法6条が適用され、公開から50年で消滅する、あるいは職務著作として製作者(団体)に帰属するため既に期間満了していると誤信し、過失はないと主張した。本件各映画の冒頭やポスターには監督名が表示されており、監督らは旧法3条に基づけば存続期間内(提訴時)に死亡していた。
あてはめ
まず、監督は映画の全体的形成に創作的に寄与し得る者であり、本件各監督はポスター等で氏名が表示され、創作的寄与を認識し得る状況にあった。次に、被告が主張する「一律に旧法6条が適用される」等の解釈は、旧法3条の規定や公的見解に照らして困難であり、相当な理由がない。さらに、職務著作を基礎付ける具体的事実も示されていない。以上から、被告は監督が著作者の一人として旧法3条が適用されることを認識し得たのであり、死亡時期を調査すれば期間存続を認識し得たといえる。
結論
被上告人が本件各映画の著作権の存続期間が満了したと誤信していたとしても、本件行為について被上告人には少なくとも過失があったというべきである。
実務上の射程
著作権侵害における過失の判断において、法律解釈の誤りや調査不足が免責事由にならないことを示した事例。特に旧法下の映画について、監督の創作的寄与や表示から著作者性を推認し、その調査義務を課している点が重要である。
事件番号: 平成20(受)889 / 裁判年月日: 平成21年10月8日 / 結論: 棄却
著作者が自然人である著作物の旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)による著作権の存続期間については,当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され,当該著作物が公表された場合には,仮に団体の著作名義の表示があったとしても,同法6条ではなく同法3条が適用され,当該著作者の死亡の時点を基準に定められる…
事件番号: 平成12(受)222 / 裁判年月日: 平成13年3月2日 / 結論: その他
カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者と…
事件番号: 平成21(受)602 / 裁判年月日: 平成23年12月8日 / 結論: その他
1 我が国について既に効力を生じている文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に我が国が国家として承認していない国が事後に加入した場合において,我が国が同国との間で同条約に基づく権利義務は発生しないという立場を採っているときは,同国の国民の著作物である映画は,同国が上記条約に加入したことによって,著作権法6条3号…
事件番号: 平成21(受)788 / 裁判年月日: 平成23年1月20日 / 結論: 破棄差戻
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて,当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,当該サービス…