1 我が国について既に効力を生じている文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に我が国が国家として承認していない国が事後に加入した場合において,我が国が同国との間で同条約に基づく権利義務は発生しないという立場を採っているときは,同国の国民の著作物である映画は,同国が上記条約に加入したことによって,著作権法6条3号所定の著作物に当たるとされることはない。 2 著作権法6条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は,同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成しない。
1 我が国について既に効力を生じている文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に我が国が国家として承認していない国が事後に加入した場合における同国の国民の著作物である映画の著作権法6条3号所定の著作物該当性 2 著作権法6条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為と不法行為の成否
(1につき)著作権法6条3号,文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約3条(1)(a) (2につき)著作権法6条,民法709条
判旨
未承認国が加入した条約上の義務が普遍的価値を有する一般国際法上の義務でない限り、わが国は当該国との間に権利義務関係を発生させるか否かを選択できる。著作権法6条各号に該当しない著作物の利用行為は、特段の事情がない限り、不法行為を構成しない。
問題の所在(論点)
1. わが国が承認していない北朝鮮の国民の著作物が、著作権法6条3号の「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」に該当するか。 2. 著作権法上の保護を受けない著作物の利用行為が、不法行為(民法709条)を構成するか。
規範
1. 既にわが国について効力が生じている多数国間条約に未承認国が事後に加入した場合、当該条約上の義務が普遍的価値を有する一般国際法上の義務であるときなどを除き、わが国は当該未承認国との間の条約に基づく権利義務関係を発生させるか否かを選択できる。 2. 著作権法6条は、独占的権利と国民の自由との調和を図る趣旨で保護範囲を定めた規定である。したがって、同条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は、同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り、不法行為(民法709条)を構成しない。
事件番号: 平成21(受)788 / 裁判年月日: 平成23年1月20日 / 結論: 破棄差戻
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて,当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,当該サービス…
重要事実
わが国が国家承認していない北朝鮮は、ベルヌ条約に加入した。わが国は同条約の原加盟国であるが、北朝鮮の加入に関し、同国との間に条約上の権利義務関係が生じた旨の告示等は行っておらず、外務省等も保護義務を否定する見解を示していた。原告(1審原告X1)は、北朝鮮の行政機関から日本国内での独占的利用権の許諾を受けていたが、被告(テレビ局Aの承継人)が番組内で本件映画の一部(2時間超のうち約2分間)を無断放送したため、著作権侵害および不法行為に基づく損害賠償を請求した。
あてはめ
1. ベルヌ条約は同盟国という国家の枠組みを前提としており、普遍的価値を有する一般国際法上の義務を課すものではない。わが国は北朝鮮との関係で権利義務関係を発生させない立場を採っているため、本件映画は同法6条3号の著作物に当たらない。 2. 1審原告X1が主張する「独占的利用の利益」は同法が規律する利益そのものであり、本件映画が同法6条各号に該当しない以上、その侵害は原則として不法行為とならない。また、放送の目的や態様(約6分間の企画中2分8秒の利用)に照らせば、自由競争の範囲を逸脱した営業妨害等の特段の事情も認められない。
結論
本件映画は著作権法6条3号の著作物に当たらず、その放送行為は1審原告X1に対する不法行為も構成しないため、請求は棄却される。
実務上の射程
未承認国の国民の著作物保護に関するリーディングケースである。著作権法上の保護を受けない対象については、民法上の不法行為による救済も「特段の事情」がない限り否定されるという、知的財産法の体系的整合性を重視する判断枠組みを示しており、答案上も著作権の成否と不法行為の成否を分けて論じる際に有用である。
事件番号: 平成22(受)1884 / 裁判年月日: 平成24年1月17日 / 結論: 破棄差戻
旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)の下において映画製作会社の名義で興行された独創性を有する映画の著作物につき,監督を担当した者が著作者の一人であり,著作者の死亡の時点を基準に著作権の存続期間を定める同法3条が適用される結果著作権が存続している場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,著…
事件番号: 平成21(受)653 / 裁判年月日: 平成23年1月18日 / 結論: 破棄差戻
1 公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たる。 2 公衆…
事件番号: 平成12(受)222 / 裁判年月日: 平成13年3月2日 / 結論: その他
カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者と…
事件番号: 平成13(受)952等 / 裁判年月日: 平成14年4月25日 / 結論: 棄却
家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は,いったん適法に譲渡された複製物について消尽し,その効力は,当該複製物を公衆に提示することを目的としないで再譲渡する行為には及ばない。