著作者が自然人である著作物の旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)による著作権の存続期間については,当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され,当該著作物が公表された場合には,仮に団体の著作名義の表示があったとしても,同法6条ではなく同法3条が適用され,当該著作者の死亡の時点を基準に定められる。
著作者が自然人である著作物について,当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示されて公表された場合における旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)による著作権の存続期間
旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)3条,旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)6条
判旨
映画の著作物の著作権の保護期間について、著作権法54条1項は「著作物」の公表時を起算点と定めているが、これは著作権者が法人であるか自然人であるかを問わず一律に適用される。無名・変名の著作物であっても、著作者が自然人であることが周知である場合には、旧法(明治32年法律第39号)52条3項が準用する同法3条の原則(著作者の死後まで存続する規定)ではなく、団体名義の著作物等に関する同法6条の特則と同様、公表後一定期間の経過により保護期間が満了すると解すべきである。
問題の所在(論点)
映画の著作物の著作権の保護期間について、著作者が自然人である場合に、著作者の生存期間を基準とするのか(旧法3条の原則)、それとも公表時を基準とするのか(現行法54条1項および旧法6条等)。
規範
1. 映画の著作物の著作権の保護期間(著作権法54条1項)は、著作者が自然人であるか法人であるかを区別せず、一律に「公表後」の期間をもって算定する。これは映画製作が多人数による共同作業であり、著作者が多数に及ぶことが通常であるため、権利関係の明確化と法的安定性を図る趣旨に基づく。 2. 旧著作権法下における映画の著作物の保護期間についても、無名・変名の著作物であっても著作者が自然人であることが周知である場合には、同法6条の規定を類推適用し、著作物の発行・興行時を起算点として期間を算定すべきである。著作者個人の死後を基準とする計算(旧法3条)は、著作者が判明しない場合や団体名義の場合には適さないためである。
事件番号: 平成19(受)1105 / 裁判年月日: 平成19年12月18日 / 結論: 棄却
昭和28年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物は,平成16年1月1日から施行された著作権法の一部を改正する法律(平成15年法律第85号)による保護期間の延長措置の対象となる同法附則2条所定の「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」に当たらず,その著作権は平成15…
重要事実
1. 本件各映画(チャップリン作品「サーカス」「街の灯」「モダン・タイムス」等)は、1928年から1936年にかけて米国で公表された。 2. これらの映画の監督、脚本、演出、主演、作曲等の主要な部分はチャップリン個人が行った。 3. 被告(上告人)は、これらの映画を複製・DVD化して販売した。 4. 原告(被上告人)は、チャップリンから著作権を承継したと主張し、被告の行為は著作権侵害に当たるとして差止めと損害賠償を求めた。 5. 被告側は、映画の保護期間は著作者(チャップリン)の死後を基準とすべきであり、旧法の適用により既に保護期間は満了している(パブリックドメイン化している)と主張して争った。
あてはめ
1. 著作権法54条1項は「映画の著作物の著作権は、その公表後(中略)五十年を経過するまでの間、存続する」と規定しており、著作者が自然人である場合を除外していない。 2. 本件映画は旧法下で公表されたものであるが、旧法6条は「団体、学校、寺院、教会若ハ其他ノ社団」名義の著作物について発行時を起算点としていた。本件映画はチャップリン個人が著作者であることが周知であったが、映画という性質上、権利関係を画一的に処理する必要性は団体名義の著作物と同様に高い。 3. したがって、著作者の死後を基準とするのではなく、公表時(発行時)を起算点として保護期間を算定するのが相当である。平成16年改正(期間延長)を考慮しても、少なくとも本件訴訟時点(平成20年頃)において保護期間は満了していない(2023年12月31日まで存続)。
結論
映画の著作権の保護期間は、著作者が自然人であっても一律に公表時から起算される。本件映画の著作権は消滅しておらず、被告による複製・販売行為は著作権侵害を構成する。
実務上の射程
判決文の文字化け等により、正確な計算根拠の一部(戦時加算等の詳細)は判決文からは不明であるが、結論として保護期間の存続が認められた事実は明確である。
事件番号: 平成22(受)1884 / 裁判年月日: 平成24年1月17日 / 結論: 破棄差戻
旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)の下において映画製作会社の名義で興行された独創性を有する映画の著作物につき,監督を担当した者が著作者の一人であり,著作者の死亡の時点を基準に著作権の存続期間を定める同法3条が適用される結果著作権が存続している場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,著…
事件番号: 平成21(受)602 / 裁判年月日: 平成23年12月8日 / 結論: その他
1 我が国について既に効力を生じている文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に我が国が国家として承認していない国が事後に加入した場合において,我が国が同国との間で同条約に基づく権利義務は発生しないという立場を採っているときは,同国の国民の著作物である映画は,同国が上記条約に加入したことによって,著作権法6条3号…
事件番号: 平成13(受)952等 / 裁判年月日: 平成14年4月25日 / 結論: 棄却
家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は,いったん適法に譲渡された複製物について消尽し,その効力は,当該複製物を公衆に提示することを目的としないで再譲渡する行為には及ばない。