一 漫画において一定の名称、容貌、役割等の特徴を有するものとして反復して描かれている登場人物のいわゆるキャラクターは、著作物に当たらない。 二 二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作物部分のみについて生じ、原著作物と共通し、その実質を同じくする部分には生じない。 三 連載漫画において、登場人物が最初に掲載された漫画の著作権の保護期間が満了した場合には、後続の漫画の著作権の保護期間がいまだ満了していないとしても、当該登場人物について著作権を主張することはできない。 四 著作権法二一条の複製権を時効取得する要件としての継続的な行使があるというためには、著作物の全部又は一部につき外形的に著作権者と同様に複製権を独占的、排他的に行使する状態が継続されていることを要し、そのことについては取得時効の成立を主張する者が立証責任を負う。 五 被上告人の平成五年法律第四七号による改正前の不正競争防止法(昭和九年法律第一四号)一条一項一号に基づく差止請求に対して、上告人が商標権の行使を理由として同法六条の抗弁を主張している場合において、事実審の口頭弁論終結後に当該商標権につき商標登録を無効とする審決が確定したときは、民訴法四二〇条一項八号に照らし、被上告人は上告審でこれを主張することができる。
一 漫画の登場人物のいわゆるキャラクターの著作物性 二 二次的著作物の著作権が生ずる部分 三 連載漫画において登場人物が最初に掲載された漫画の著作権の保護期間が満了した後に当該登場人物について著作権を主張することの可否 四 著作権法二一条の複製権を時効取得する要件としての権利行使の態様とその立証責任 五 上告審における被上告人の新たな主張が民訴法四二〇条一項八号に照らし許されるものとされた事例
著作権法2条1項1号,著作権法2条1項11号,著作権法21条,著作権法53条1項,著作権法56条1項,民法163条,民訴法第2編第3章第1節総則,民訴法394条,民訴法420条1項8号,旧不正競争防止法(昭和9年法律第14号)1条1項1号,旧不正競争防止法(昭和9年法律第14号)6条,商標法46条1項1号
判旨
キャラクター自体は抽象的概念であって著作物ではないが、連載漫画の各回は著作物であり、後続作品が先行作品の二次的著作物となる場合、後続作品の著作権は新たに付与された創作的部分にのみ生じる。したがって、共通するキャラクターの特徴部分の保護期間は、その特徴が最初に現れた回の公表時から起算される。
問題の所在(論点)
1. キャラクター自体が独立した著作物といえるか。2. 二次的著作物(後続作品)の著作権は、原著作物(先行作品)と共通する部分にも及ぶか。3. 複製権の時効取得(民法163条)が認められるための要件は何か。
規範
1. 漫画のキャラクターは、具体的な漫画表現から昇華した抽象的概念であり、それ自体は著作物(著作権法2条1項1号)ではない。2. 連載漫画において、後続の漫画が先行する漫画と登場人物等の特徴を同じくし新たな筋書きを付したものは、先行作品を原著作物とする二次的著作物となる。3. 二次的著作物の著作権は、新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と実質を同じくする部分には生じない。4. 複製(21条)とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいい、その特徴から当該登場人物を描いたものであると知り得れば足りる。
重要事実
一話完結形式の連載漫画「ポパイ」の著作権者である原告(被上告人)が、ポパイの図柄を付したネクタイを販売する被告(上告人)に対し、著作権侵害に基づき販売差止等を求めた。ポパイが初めて登場した「第一回作品」は1929年に公表され、その著作権保護期間は既に満了していたが、原告は、保護期間が満了していない「後続作品」の著作権に基づき差止めを主張した。なお、被告は複製権の時効取得も抗弁として主張した。
あてはめ
1. キャラクターは具体的表現ではないため、著作物性は否定される。著作権侵害は各回の漫画ごとに検討すべきである。2. 後続作品は、第一回作品を翻案した二次的著作物と解されるが、ポパイの容貌等の共通部分は第一回作品ですでに表現されており、後続作品で新たに付与された創作的部分ではない。よって、共通部分の保護期間は第一回作品の公表時から進行し、期間満了後は後続作品の著作権に基づき差止めを求めることはできない。3. 複製権の時効取得には、権利を専有する状態(独占的・排他的な行使)の継続が必要であるが、本件では原告側も継続的にポパイを利用しており、被告側が独占的に行使していたとはいえない。
結論
1. 本件図柄は第一回作品の複製の範囲内であるが、その保護期間が満了しているため、後続作品の著作権に基づく差止請求は認められない。2. 複製権の時効取得の抗弁は、独占的・排他的行使の欠如により認められない。
実務上の射程
連載キャラクターの保護期間を初出時から起算する「ポパイ原則」として重要。実務上、シリーズ物の著作権行使では、侵害された具体的表現がどの時点で創作されたものかを特定し、各回の保護期間を個別に管理する必要がある。また、無体財産権の時効取得における「行使」の厳格な解釈(独占性)も実務上の指針となる。
事件番号: 平成13(受)952等 / 裁判年月日: 平成14年4月25日 / 結論: 棄却
家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は,いったん適法に譲渡された複製物について消尽し,その効力は,当該複製物を公衆に提示することを目的としないで再譲渡する行為には及ばない。
事件番号: 平成20(受)889 / 裁判年月日: 平成21年10月8日 / 結論: 棄却
著作者が自然人である著作物の旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)による著作権の存続期間については,当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され,当該著作物が公表された場合には,仮に団体の著作名義の表示があったとしても,同法6条ではなく同法3条が適用され,当該著作者の死亡の時点を基準に定められる…
事件番号: 平成19(受)1105 / 裁判年月日: 平成19年12月18日 / 結論: 棄却
昭和28年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物は,平成16年1月1日から施行された著作権法の一部を改正する法律(平成15年法律第85号)による保護期間の延長措置の対象となる同法附則2条所定の「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」に当たらず,その著作権は平成15…
事件番号: 平成22(受)1884 / 裁判年月日: 平成24年1月17日 / 結論: 破棄差戻
旧著作権法(昭和45年法律第48号による改正前のもの)の下において映画製作会社の名義で興行された独創性を有する映画の著作物につき,監督を担当した者が著作者の一人であり,著作者の死亡の時点を基準に著作権の存続期間を定める同法3条が適用される結果著作権が存続している場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,著…