1 甲が各回ごとの具体的なストーリーを創作し,これを小説形式の原稿にし,乙において,漫画化に当たって使用することができないと思われる部分を除き,その原稿に基づいて漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作された連載漫画は,同原稿を原著作物とする二次的著作物である。 2 二次的著作物である連載漫画の原著作物である原稿の著作者は,同連載漫画の著作者に対し,同連載漫画の主人公を描いた絵画を合意によることなく作成し,複製し,又は配布することの差止めを求めることができる。
1 小説形式の原稿に基づいて制作された連載漫画が同原稿を原著作物とする二次的著作物であるとされた事例 2 二次的著作物である連載漫画の原著作物である原稿の著作者から同連載漫画の著作者に対する同連載漫画の主人公を描いた絵画の作成,複製又は配布の差止請求の可否
著作権法2条1項11号,著作権法28条,著作権法65条2項,著作権法112条1項
判旨
連載漫画が小説形式の原稿に依拠して作成された二次的著作物である場合、原著作物の著作者は二次的著作物の著作者と同一の権利を専有し、両者の権利は併存する。したがって、二次的著作物の著作者であっても、原著作者との合意なしに当該著作物(キャラクター絵を含む)を利用することはできない。
問題の所在(論点)
ストーリーを記述した原稿に基づき描かれた漫画が「二次的著作物」に該当するか。また、二次的著作物の著作者が、原著作者の合意なく当該著作物のキャラクター絵等を利用できるか。
規範
著作権法28条によれば、二次的著作物の利用に関し、原著作物の著作者は当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。この原著作者の権利と二次的著作物の著作者の権利は併存するため、二次的著作物の著作者が自ら作成した著作物であっても、原著作物の権利を包含する部分を利用するにあたっては、原著作者との合意を要する。
重要事実
事件番号: 平成12(受)798 / 裁判年月日: 平成3年10月25日
【結論(判旨の要点)】二次的著作物である漫画の利用に関し、原著作物たる小説の著作者は、漫画の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。したがって、漫画の著作者が漫画のキャラクターを描いた原画を作成・複製・配布するには、原著作者との合意を要する。 第1 事案の概要:被上告人(原作者)は、漫画の各回ごとの具体的なスト…
被上告人(原作者)は、漫画の各回ごとの具体的なストーリーを小説形式の原稿として創作した。上告人(漫画家)は、その原稿に依拠しつつ、漫画化に適さない部分を除くなどの調整を経て漫画を作成する手順を繰り返して本件連載漫画を制作した。その後、上告人が原作者の合意なく、漫画の主人公を描いた原画を作成・複製・配布したため、原作者が差止め等を求めて提訴した。
あてはめ
本件連載漫画は、被上告人が創作した小説形式の原稿という具体的表現に依拠して作成されているため、同原稿を原著作物とする二次的著作物にあたる。この場合、原著作物の著作者である被上告人は、著作権法28条に基づき、漫画の著作者である上告人が有するものと同一の種類の権利を専有する。上告人の権利と被上告人の権利は併存する状態にあるため、上告人が本件漫画の主人公を描いた原画を作成・配布する行為は、両者の合意がなければ適法に行うことができない。
結論
被上告人(原作者)は、合意なく本件原画を作成・複製・配布する上告人(漫画家)に対し、差止めを求めることができる。原審の請求認容は正当である。
実務上の射程
二次的著作物の利用(複製、翻案等)について、原著作者が二次的著作物の著作者と同様の排他的権利を持つことを明確にした。答案上は、キャラクターや漫画の利用に関する紛争において、原著作物(脚本・小説)と二次的著作物(漫画・アニメ)の関係を28条に基づき論証する際に必須の判例である。
事件番号: 平成4(オ)1443 / 裁判年月日: 平成9年7月17日 / 結論: その他
一 漫画において一定の名称、容貌、役割等の特徴を有するものとして反復して描かれている登場人物のいわゆるキャラクターは、著作物に当たらない。 二 二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作物部分のみについて生じ、原著作物と共通し、その実質を同じくする部分には生じない。 三 連載漫画において、登場人物…
事件番号: 平成10(受)332 / 裁判年月日: 平成12年9月7日 / 結論: 棄却
印刷用書体が著作権法二条一項一号にいう著作物に該当するためには、従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性及びそれ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならない。
事件番号: 平成21(受)788 / 裁判年月日: 平成23年1月20日 / 結論: 破棄差戻
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて,当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,当該サービス…
事件番号: 平成13(受)866等 / 裁判年月日: 平成16年2月13日 / 結論: その他
競走馬の所有者は,当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対し,その名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利(いわゆる物のパブリシティ権)の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることはできない。