スナック等の経営者が、カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲の録音されたカラオケテープとを備え置き、客に歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による伴奏により他の客の面前で歌唱させるなどし、もつて店の雰囲気作りをし、客の来集を図つて利益をあげることを意図しているときは、右経営者は、当該音楽著作物の著作権者の許諾を得ない限り、客による歌唱につき、その歌唱の主体として演奏権侵害による不法行為責任を免れない。
カラオケ伴奏による客の歌唱につきカラオケ装置を設置したスナック等の経営者が演奏権侵害による不法行為責任を負うとされた事例
著作権法22条,著作権法(昭和59年法律第46号による改正前のもの)38条,著作権法(昭和61年法律第64号による改正前のもの)附則14条,著作権法施行令附則3条,旧著作権法(明治32年法律第39号)30条1項8
判旨
カラオケスナックの経営者が、客や従業員にカラオケ伴奏による歌唱を行わせる場合、管理の有無および営業上の利益の帰属という観点から、経営者自身がその演奏(歌唱)の主体であると解される。
問題の所在(論点)
カラオケスナックにおいて客が歌唱する場合、物理的な行為者ではない経営者が、当該音楽著作物の利用主体として演奏権(著作権法22条)侵害の責任を負うか。
規範
著作権法上の演奏(22条)の主体は、物理的な行為者に限られず、①当該行為を管理・支配しているか(管理性)、②当該行為によって営業上の利益を得ているか(利益の帰属)という観点から実質的に判断すべきである。
重要事実
スナック等の経営者らは、カラオケ装置と楽曲が録音されたテープを備え置き、従業員が装置を操作し、客に歌唱を勧めたり、従業員自らも歌唱したりしていた。これにより、店内の雰囲気を醸成して客を呼び寄せ、利益を上げることを意図していた。客は店が提供する範囲内で選曲し、従業員の管理下で歌唱していた。
事件番号: 平成12(受)222 / 裁判年月日: 平成13年3月2日 / 結論: その他
カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者と…
あてはめ
客は経営者が備え置いた装置やテープを利用し、従業員の勧めや操作を通じて歌唱しており、経営者の「管理」下にあるといえる。また、経営者は客の歌唱を店の営業政策の一環として取り入れ、客の来集を図って利益増大を意図していることから、営業上の「利益」を享受しているといえる。したがって、客による歌唱は経営者による演奏と同視しうる。
結論
経営者は客による歌唱の主体として演奏権侵害の責任を負う。
実務上の射程
いわゆる「カラオケ法理」を確立した重要判例である。物理的行為者以外の者を主体として捉えるための二要素(管理性・利益性)は、その後のファイル共有ソフト(Winny等)や録画代行サービスに関する著作権侵害事案においても広く参照される判断枠組みとなっている。
事件番号: 平成21(受)788 / 裁判年月日: 平成23年1月20日 / 結論: 破棄差戻
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて,当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,当該サービス…
事件番号: 平成21(受)653 / 裁判年月日: 平成23年1月18日 / 結論: 破棄差戻
1 公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たる。 2 公衆…
事件番号: 令和3(受)1112 / 裁判年月日: 令和4年10月24日 / 結論: 棄却
音楽教室の運営者と演奏技術等の教授に関する契約を締結した者(生徒)が、上記契約に基づき、上記運営者に対して受講料を支払い、演奏技術等の教授のためのレッスンにおいて教師の指示・指導の下で著作権等管理事業者の管理に係る音楽著作物を含む課題曲を演奏する場合に、次の(1)~(3)など判示の事情の下では、上記レッスンにおける生徒…
事件番号: 昭和58(オ)1022 / 裁判年月日: 昭和63年12月20日 / 結論: 棄却
市営地下鉄の列車内における商業宣伝放送は、業務放送の後に「次は○○前です。」又は「○○へお越しの方は次でお降りください。」という企業への降車駅案内を兼ね、一駅一回五秒を基準とする方式で行われ、一般乗客にそれ程の嫌悪感を与えるものではないなど原判示の事情の下においては、これを違法ということはできない。 (補足意見がある。…