マンションの建替え等の円滑化に関する法律2条1項4号のマンション建替事業の施行者が同法76条3項に基づく補償金の供託義務を負う場合において、上記補償金の支払請求権に対して複数の差押命令が発せられ、差押えの競合が生じたときは、上記施行者は、上記補償金について、同項及び民事執行法156条2項を根拠法条とするいわゆる混合供託をしなければならない。
マンション建替事業の施行者がマンションの建替え等の円滑化に関する法律76条3項に基づく補償金の供託義務を負う場合において、上記補償金の支払請求権に対して複数の差押命令が発せられて差押えの競合が生じたときに上記施行者がすべき供託
マンションの建替え等の円滑化に関する法律76条3項、マンションの建替え等の円滑化に関する法律77条、民事執行法156条2項、民事執行法157条4項、供託規則13条2項5号
判旨
マンション建替法76条3項の供託義務を負う施行者が、補償金請求権に対し差押えの競合を受けた場合、同条項と民事執行法156条2項の両方を根拠とする混合供託をすべきである。一方の根拠法条(建替法76条3項)のみで行った供託は、差押債権者に対抗することができない。
問題の所在(論点)
円滑化法76条3項の供託義務と、差押えの競合に伴う民事執行法156条2項の義務が重なる場合、第三債務者たる施行者はどのような方法で供託すべきか。また、一方の根拠のみで行った供託を差押債権者に対抗できるか。
規範
マンション建替え等の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」)76条3項に基づく供託義務がある場合において、当該補償金請求権に複数の差押命令が発せられ差押えの競合が生じたときは、施行者は円滑化法76条3項及び民事執行法156条2項の両方を根拠法条とする混合供託をしなければならない。法令上、同項の適用を除外する規定はなく、混合供託によっても抵当権者等の優先弁済権は害されないためである。
重要事実
マンション建替事業の施行者(被上告人)は、区分所有者Bに対し円滑化法に基づく補償金支払義務を負っていた。当該補償金請求権に対し、一般債権者(上告人)が差押えを行い、その後、抵当権者ら2名が物上代位権の行使としてそれぞれ差押えを行った。これにより差押えの競合が生じたが、施行者は円滑化法76条3項のみを根拠として全額を供託した。これに対し、上告人が取立訴訟を提起し、上記供託の有効性を争った。
あてはめ
円滑化法76条3項の趣旨は、補償金が所有者に直接支払われるのを防ぎ抵当権者等を保護することにある。差押えの競合が生じた場合でもこの義務は存続するが、同時に民事執行法156条2項による義務も発生する。本件施行者は、両条項を根拠とする混合供託をすべきであった。しかし、本件では円滑化法のみを根拠に供託しており、執行法156条2項に基づく義務を果たしたとはいえない。したがって、当該供託をもって差押債権者である上告人に対抗することはできないと解される。
結論
被上告人は本件供託をもって上告人に対抗できない。原判決を破棄し、上告人の請求を認容(供託の方法による支払を命じる)する。
実務上の射程
特別法による供託義務(物上代位目的等)と民事執行上の義務が競合する際、実務上は「混合供託」を必須とする基準を示した。執行法上の義務を看過した供託は、差押債権者に対する弁済(免責)の効力を有しないため、答案上も根拠法条を峻別する必要がある。
事件番号: 令和3(受)1620 / 裁判年月日: 令和5年11月27日 / 結論: 破棄自判
抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に、賃貸人との間で、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と上記の差押えがされた後の期間に対応する賃料債権とを直ちに対当額で相殺する旨の合意をしたとしても、当該合意の効力を抵当権者に対抗することはできない。 (意見がある。)
事件番号: 昭和36(オ)952 / 裁判年月日: 昭和38年8月23日 / 結論: 棄却
反対給付に関する約旨の一部について解釈が分れ意見が対立している場合に、その部分の先履行を要求しながら代金の提供をしても、債務の本旨に従つた履行の提供とはいえない。