債権の差押債権者が差押債権の取立命令をえた場合に、第三債務者は、差押前に債務者に対し取得した反対債権をもつて差し押えられた債権と相殺するには、右取立命令をえた差押債権者に対しても相殺の意思表示をすることができる。
受働債権につき取立命令がなされた場合と相殺の意思表示の相手方。
民法511条,民訴法600条
判旨
債権の取立命令を得た差押債権者は、自己の名において当該債権を行使する権能を有するため、第三債務者は、差押前に取得した反対債権による相殺の意思表示を当該差押債権者に対して行うことができる。
問題の所在(論点)
債権の差押債権者が取立命令を得た場合において、第三債務者が差押前に取得した反対債権に基づき相殺を主張する際、その意思表示は誰(差押債権者か、あるいは債務者か)に対してなすべきか。取立命令を得た差押債権者の法的地位と相殺の意思表示の受領権能が問題となる。
規範
債権の取立命令を得た差押債権者は、自己の名において当該債権を行使しうる権能(取立権)を有するものである。したがって、第三債務者が差押前に取得した反対債権をもって相殺する場合、その債権行使を阻むための相殺の意思表示は、取立権を有する差押債権者に対してなすことができる。
重要事実
上告人(差押債権者)は、訴外D社が被上告人(第三債務者)に対して有する債権を差し押さえ、取立命令を得た。これに対し被上告人は、本件債権の差押前にD社に対して取得し、かつ相殺適状に達していた反対債権を有していた。被上告人は、取立命令を得た上告人に対し、当該反対債権をもって本訴請求債権と対等額で相殺する旨の意思表示を行った。
あてはめ
取立命令によって、上告人はD社の債権を自己の名で行使する法的権能を取得したといえる。この場合、実質的な権利行使の主体は上告人であるから、被上告人が債権の消滅を主張するための相殺の意思表示も、その行使主体である上告人に対してなされるのが合理的である。したがって、被上告人が上告人に対して行った相殺の意思表示は有効なものとして受理されるべきである。
結論
第三債務者は、取立命令を得た差押債権者に対し相殺の意思表示をすることができ、それによる債権消滅の効果を差押債権者に対抗できる。
実務上の射程
取立訴訟等において第三債務者が相殺の抗弁を主張する際の意思表示の相手方を明示したもの。民法511条による相殺禁止の範囲外である(差押前の取得)ことを前提に、手続上の意思表示の宛先として差押債権者が適格であることを認めている。
事件番号: 昭和47(オ)1316 / 裁判年月日: 昭和48年5月25日 / 結論: 棄却
債権が差し押えられた場合において、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたときは、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、右債権および被差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は、差押後においても、右反対債権を自働債権として、被差押債権と相殺することができる。 (最大判昭和…